ペルーアマゾンにおける先住民の村の焼畑と休閑地利用

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  • Slash-and-Burn and Fallow Land Use in Indigenous Village of the Peruvian Amazon

抄録

<p>20世紀の末以降、急速な森林減少が世界的な問題となっている。アマゾンでは21世紀においても、その熱帯林の減少傾向が今もなお続いている。例えば、アマゾンの熱帯雨林の6割を占めるとされるブラジルのアマゾン熱帯林は、1970年頃の森林面積を100%とした場合に、1986年に93.7%、2000年に87.9%、2018年に82.7%へと年々減少を続けている。 </p><p> 森林減少の要因を考えた場合、新たな農地の造成(焼畑以外)、商業的な森林伐採、居住地の拡大など多様な要因が考えられるが、古来より継続されてきたと考えられる焼畑は森林減少のどの程度の要因となっているのかについて疑問を持つ方は多いようである。 </p><p> 焼畑は世界の熱帯地域から温帯地域にかけて広くみられる農業で、福井(1983)による焼畑の定義によると「ある土地の現存植生を伐採・焼却等の方法を用いることによって整地し、作物栽培を短期間おこなった後、放棄し、自然の遷移によってその土地を回復させる休閑期間をへて再度利用する、循環的な農耕である」と定義されている。焼畑の大きな特徴は、休閑期間を設けることにあるといえる。</p><p> 20世紀の中頃までは世界の熱帯地域から温帯地域で広く営まれていた焼畑であるが、20世紀の中頃以降になると日本だけでなく世界的に急速に姿を消しつつある。例えば2010年前後の世界の焼畑の分布を見てみると、東南アジア大陸部の焼畑はラオス北部に一部残るのみで、他の地域では焼畑はほぼ見られなくなっている。焼畑は世界的に風前の灯火といえる農業となっている。このような現状において、現在も焼畑を営みながら暮らす人びとがペルーアマゾンに存在している。 </p><p> 本報告では、アマゾン熱帯林のうちアマゾン川の最上流域にあたるペルーアマゾンの先住民の村を対象として、焼畑の実態と休閑地利用について把握することをとおして森林環境問題について考えてみたい。すでに、筆者の一人は、調査地においてペッカリー狩猟、その肉や皮の流通を報告してきた(池谷2022)。現地調査は、2020年2月にペルーアマゾンの先住民の村にて行われた。その結果、2世帯の焼畑の分布とそこでのキャッサバを中心とする栽培植物、および休閑地での商業用の樹木の栽培が明らかになった。</p><p>引用文献  </p><p>池谷和信2022「社会複雑性の萌芽と形成ーアマゾニアの民族誌から探るー」『年報 人類学研究』第13号、89-100頁、南山大学人類学研究所</p><p>福井勝義1983「焼畑農耕の普遍性と進化-民俗生態学的視点から」『日本民俗文化大系』5巻、235-274頁、小学館。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390014194595878144
  • DOI
    10.14866/ajg.2023s.0_203
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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