喜界島北東海岸における完新世離水サンゴ礁と初期カルスト地形

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  • Holocene Emerged Coral Reefs and Early Karstification on Northeast Coast in Kikai Island

抄録

<p>琉球列島には更新世以降に堆積した琉球層群石灰岩が分布し,起伏に富んだ独特なカルスト地形(円錐カルストやドリーネなど)を形成する.石灰岩が淡水による溶食を受けることで地形が形成されるカルスト化は基本的に,離水し陸化すると始まり,時間が経過するほど離水直後の地形は不明確になっていく.そのため,更新世のカルスト地形において離水直後の原地形を確認することは困難である.琉球列島のカルスト地形に関する研究では,更新世琉球層群の石灰岩を対象とするものが多く,海岸カルストの侵食微地形は記載されているが,原地形や構成物との関係はほとんど調査されていない.そこで本研究では,完新世離水サンゴ礁を調査対象とし,現地調査を基に,原地形・構成物と離水後の侵食地形の関係を詳細に捉えることで,原地形が初期のカルスト化にどのように寄与するかを明らかにすることを目的とした.</p><p> 研究対象地は喜界島北東部に位置する志戸桶とトンビ崎であり,世界有数の隆起速度(1.0~1.5m/ka)をもつ喜界島の完新世離水サンゴ礁である.喜界島では4段の段丘面(Ⅰ~Ⅳ面)が確認されており(佐々木ほか 1998),そのうち約5100年前に隆起した段丘面(Ⅱ面)と約2900年前に隆起した段丘面(Ⅲ面)について以下の方法で調査を行った.本研究では,RTK-GNSSを搭載したUAVであるPhantom4 RTK (DJI社)を使用した地形測量を実施した.このUAVを用いることで,短期間に広範囲にわたって高精度の測量が可能となった.3DモデリングソフトウェアにはMetashape Professional (Agisoft社)を使用し,1cm/pixelの数値表層モデル,オルソ画像を作成した.現地調査は,1/50スケールのオルソ画像にサンゴ礁地形とその構成物,侵食地形をそれぞれ記載した.</p><p> 離水サンゴ礁表面の堆積物は原地性サンゴあるいは砂礫にて構成されており,地形と堆積物がサンゴ礁の縁脚縁溝系に一致することから,基となるサンゴ礁の縁脚縁溝系とその配置が復元された.つまり,原地性サンゴで構成される凸地形は縁脚,砂礫堆積物で構成される凹地形は縁溝に対応する地形が残されている.侵食形態の分布から離水後の地形変化には,基の地形を残しながらも縁脚と縁溝で異なる地形変化が見られた.縁脚では,淡水と雨水の混合水による溶食を受けてカメニツァ(溶食皿状凹地)やラピエが形成されている.カメニツァの分布域はⅡ面端部~Ⅲ面で,海側ほど密度が高くなる.ラピエは, Ⅲ面端部で顕著に発達しており,ラピエが分布するゾーンにカメニツァは見られない.ここでは,長径と短径にあまり差がないラピエ(径20~30cm,深さ20~30cm)が多く分布しており,一部のラピエでは侵食が進行したことで隣り合う複数の窪みが統合されていた(長径50~100cm,短径30~50cm,深さ20~50cm).また,2020年8月のドローンによる地形測量の際に存在した地形が,2022年10月の現地調査時には変化していた事例もみられた.ブロック状に剥離された痕跡(最大2×1.5×0.7m)や,長径1m前後の巨礫の移動が複数確認された.台風時の波浪による破壊・侵食によるものと考えられる.長期間にわたる溶食とともに,台風時の暴浪による削剥が原地形の変化に大きく寄与していると推測できる.離水した縁溝周辺では,原地形の形状によって侵食形態が異なる.直線的な縁溝では,原地性サンゴで構成された縁脚の壁が後退し,縁溝を構成する固結した砂礫堆積物と同等の高さで凹地が拡大しているものが多く見られた.一方,Ⅲ面に分布する幅広の閉じた縁溝(方名:カタマ)は,現在の未固結砂礫によって埋積され,凹地が浅くなっているものが多い.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390014194595912832
  • DOI
    10.14866/ajg.2023s.0_250
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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