スウェーデン・フィンランド国境にまたがる新都心建設がもたらす経済効果

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タイトル別名
  • The economic impact caused by construction of the new city center on the Swedish-Finnish border
  • A case study of HaparandaTornio
  • ハパランダトルニオにおける事例研究

抄録

<p>1.はじめに</p><p> スウェーデン・フィンランド国境に位置するハパランダトルニオでは、国境線をまたいだ新都心建設が進んでいる。</p><p> この都市結合による効果について、政治学・社会学的側面からの研究は進んでいるが、経済面での効果に関する研究は少ない。本発表では、この事業による経済面での分析を行う。</p><p>2.地域の概況</p><p> もともとは全体がスウェーデン領だったが、現在のフィンランドがロシア領になる時に国境線が引かれ、国境の川の中洲にあった都市トルニオはロシア領になった。右岸のスウェーデン領内に新都市ハパランダが建設され現在に至る。</p><p> トルニオはほぼ全住民がフィンランド語を話すフィンランド人である。ハパランダはスウェーデン人、フィンランド人、先住民のトルネダリアンがほぼ3分の1ずつで、全員スウェーデン語を話せる。人口はトルニオが約2万人、ハパランダが約1万人である。トルニオは工業従事者が多いが、両都市とも医療福祉関係の就業者が多い(表)。</p><p> 国境をまたいだ新都心の建設がEU Interreg Aプロジェクトを中心に進められている。2000年から2006年までの間に受け取った資金は3700万ユーロ以上、2007年から2013年の総予算は約5700万ユーロで、そのうちERDFの資金は約3400万ユーロを占めている。</p><p>3.国境地帯に起こる産業</p><p> 国境地帯に興る産業として、行政機関(軍事関連、税関等)、商業施設(国境貿易、免税店等)、観光関連(国境観光、コンベンション施設等)の3つが挙げられる。行政機関は国境機能の撤廃とともに縮小している。商業施設はIKEAの新店舗が立地した事例はあるが両国間に経済格差が少ないこともあり立地の優位性がない。観光施設で特に有力なものはなく観光客も多くない。結果として現状では経済面でのメリットは見出せていない。</p><p> この地域の実情を見ると、経済的効果を生むにはもっと広い範囲(Bothnian Arc)(図)で連帯して、情報通信関連の研究機関を誘致するなどの方策が考えられる。</p><p>4.まとめ</p><p> 都市結合による効果は行政サービスや地域の文化を守る点では機能しているが、多額の予算を使う以上は経済的にも効果が出る方向性も考慮しないといけない。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390014194596024320
  • DOI
    10.14866/ajg.2023s.0_82
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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