淀川水系における近代治水の構想とその不合理性

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タイトル別名
  • 三川合流部の水理

抄録

現在の淀川水系の治水構想が水理についての合理的でない認識のもとに構築されており、その認識の起源が近代治水の本格創始した明治中期にも遡ることを指摘した。淀川改良工事の立案の際、淀川水系における宇治川・桂川・木津川の三大支流の合流部についての当時の水理の理解にもとづいて、流量主義や河道内治水原理が導入され、三川合流部に本来的に存在すべき遊水機能の排除が構想され、それは後に巨椋池干拓へと結びついた。その帰結としていかなる状況がもたらされたかは、宇治川左岸の破堤で巨椋池干拓地を全面浸水させた1953年台風13号豪雨や、天ヶ瀬ダム緊急放流や桂川右岸堤防越水に至った2013年台風18号豪雨の際の実測データから実証的に確認できる。過去から現在に至るまで、こうした認識にもとづいた不適合な事業が治水の名の下に計画あるいは実施され続けており、結果、予見し得る氾濫の危険性が放置されたままとなっている。

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