高齢者における処方適正化の取り組み

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Efforts to Optimize Prescriptions for Elderly Patients

この論文をさがす

抄録

<p>高齢者は複数の疾患を併発して,多剤併用処方になることが多い.多剤併用は薬物相互作用,薬物有害事象,転倒等のリスクを高めることから,適宜,高齢者に対して潜在的に不適切な薬物(PIMs)をスクリーニングして,処方を適正化する必要がある.</p><p>PIMsのスクリーニングツールとしてはSTOPP criteria,高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015,東京大学病院持参薬評価テンプレート等がある.</p><p>STOPP criteriaは一般病棟の患者に適用され,その後の薬学的介入により,ベンゾジアゼピン系薬,非ステロイド性抗炎症薬,臨床的に適応のない薬物が多く中止されている.</p><p>高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015の「特に慎重な投与を要する薬物(以下,ガイドライン収載薬)のリスト」は在宅,療養病棟,地域包括ケア病棟の患者に適用されている.そして,療養病棟と地域包括ケア病棟での実践例から,減薬されるのはガイドライン収載薬だけではないことが示唆されている.</p><p>東京大学病院の持参薬評価テンプレートは処方を多面的に評価できるツールであり,これまでに一般病棟,回復期リハビリテーション病棟,地域包括ケア病棟の患者および特別養護老人ホームの入所者に適用されている.その結果,入院中に処方が適正化されるのは同種同効薬の重複,副作用等の緊急性の高い理由がある場合で,ガイドライン収載薬や服薬管理能力の低さは減薬の理由になりにくいことが判明している.また,いずれの病棟においても病状に応じて新たな薬物が処方されており,退院後も処方の適正化を継続する必要があることも明らかになっている.さらには,高齢者施設では副作用や処方意図不明といった理由および検査値を基に処方が適正化されている.</p><p>減薬により状態の悪化が予測される場合もあるため,スクリーニングされた全てのPIMsを中止できるわけではないが,多くの医療機関,高齢者施設,居宅で処方の適正化が行われ,多剤併用によるリスクが低減するように願っている.</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ