高齢者の降圧治療と認知症

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  • Efficacy of Antihypertensive Treatment on Dementia in Older People

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<p>著増する認知症への対策が急がれている.高齢者の認知症はアルツハイマー病や血管認知症が混在する混合性認知症が多く,血管性要因が関与することから若年期の生活習慣病との関連が唱えられている.中年期の高血圧は血管障害を誘導して将来の認知症との関連が疫学的に示されているが,高齢期での高血圧が認知症に与える影響についてはよくわかっていない.SPRINT試験は標準的な降圧治療よりも,より厳格な降圧治療群において,心血管合併症や生命予後が改善されることを証明したが,認知症との関連も解析され,75歳以上の高齢者においても厳格な降圧により軽度認知機能障害(MCI)の発症が有意に抑制されることがわかった.また脳や海馬の容量は減少するものの脳血流が増加すること,こうした脳への影響は腎機能障害と関連があることもわかってきた.一方で,血圧変動性がある高齢者ではその効果が見られなくなること,心房細動を有する高齢者では厳格降圧群でむしろ認知機能が悪化することなど,特定の高齢者では厳格な降圧がデメリットになることが示されている.以前より,認知機能低下患者において交感神経系の活性化が見られることが報告されている.厳格な降圧治療により,しっかりと降圧されかつ交感神経系の活性も適切に抑制された高齢者では認知症の進行が抑えられる可能性があるが,血圧の変動が大きいと潜在的な低血圧による脳への血流低下状態が誘導され,認知機能の低下につながると考察する.このように,高齢者の降圧治療については過度の血圧低下がないかに注意する必要があるが,老若男女を問わず,高血圧患者は少なくとも140/90 mmHg以下の標準的治療目標値は達成されなくてはならない.しかし,多くの降圧薬が存在するにもかかわらず実際の高血圧の治療管理率は低く,将来の認知症患者を減らすために,適切な降圧療法が望まれる.</p>

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