骨形成不全症患者の慢性根尖性歯周炎罹患歯に対応した1症例

DOI
  • 前薗 葉月
    大阪大学大学院歯学研究科 歯科保存学講座
  • 川西 雄三
    大阪大学大学院歯学研究科 歯科保存学講座
  • 島岡 毅
    大阪大学大学院歯学研究科 歯科保存学講座
  • 高橋 雄介
    大阪大学大学院歯学研究科 歯科保存学講座
  • 林 美加子
    大阪大学大学院歯学研究科 歯科保存学講座

書誌事項

タイトル別名
  • Nonsurgical Root Canal Treatment of Chronic Apical Periodontitis in an Osteogenesis Imperfecta Patient: A Case Report

抄録

<p> 緒言:骨形成不全症(Osteogenesis imperfecta,以下,OI)は約2万人に1人の割合で発生する先天性疾患であり,歯科的な症状として,象牙質形成不全やそれに伴う歯髄腔の狭窄などが認められる.今回,OI患者の慢性根尖性歯周炎に罹患した下顎中切歯に対し根管治療を行う際,歯科用コーンビームCT(以下,CBCT)や歯科用実体顕微鏡(以下,マイクロスコープ)を用いた拡大視野下で施術することで,良好な治癒経過を得られた症例を報告する.</p><p> 症例:患者はOIの12歳女児.2020年2月末に菓子を食べた際に下顎前歯部に動揺および咬合痛が出現したため,大阪大学歯学部附属病院小児歯科にて下顎前歯部の固定を行い経過観察していた.受傷数日後のデンタルエックス線画像より根尖部透過像を認めたが,歯髄腔が狭窄し根管治療が困難との判断にて,固定した状態で経過観察を続けていた.症状の改善を認めないため,加療目的で6月に同院保存科を受診した.デンタルエックス線およびCBCT画像より下顎右側中切歯根尖部に透過像を認め,切端から歯根中央部まで歯髄腔の狭窄を認めた.以上より,同歯は慢性根尖性歯周炎と診断し,根管治療を行うこととした.</p><p> マイクロスコープ下で髄腔開拡を行い,数回にわたり根管探索を進めるも,歯髄腔が見当たらず根管治療は困難を極めた.根管探索部と本来の根管の位置との関係を確認するため,再度CBCTを撮影し,探索中の部位は実際の根管より遠心および舌側に逸脱していることを確認した.その後,根管の方向を修正し本来の根管を発見したうえで根管治療を進め,最終的に12月に症状の消失を確認し,根管充塡を行った.経過良好であったため,根管充塡1カ月後にコンポジットレジン修復を行った.根管充塡後に特記すべき症状は認めず,根管充塡1年後に撮影したデンタルエックス線およびCBCT画像では,下顎右側中切歯根尖部透過像の消失を確認し,臨床症状も認めず経過良好である.</p><p> 考察および結論:OIは歯冠の破折を生じやすく,その歯科管理には注意が必要である.今回の症例では,治療が困難といわれているOI患者の根尖性歯周炎に対しても,適切な治療を行うことで良好な治癒が得られることを示した.歯髄腔がきわめて狭窄した患歯においても,適切なタイミングでのCBCT撮影やマイクロスコープの活用により,困難な根管治療を円滑に進めることができると考えられる.</p>

収録刊行物

  • 日本歯科保存学雑誌

    日本歯科保存学雑誌 66 (2), 131-137, 2023-04-30

    特定非営利活動法人 日本歯科保存学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390014558853917952
  • DOI
    10.11471/shikahozon.66.131
  • ISSN
    21880808
    03872343
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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