筋質の評価・観察・介入研究

  • 畑中 翔
    地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター研究所自立促進と精神保健研究チームフレイルと筋骨格系の健康研究
  • 大須賀 洋祐
    国立研究開発法人国立長寿医療研究センター老年学・社会科学研究センターフレイル研究部

書誌事項

タイトル別名
  • Muscle quality: the assessment, prognosis, and intervention

抄録

<p>サルコペニアは,筋量の減少と筋機能の低下が進行する全身性の筋骨格系疾患と定義され,様々な予後の悪化(転倒,機能低下,フレイル,死亡率など)と関連する1.ヨーロッパやアジアを中心とする作業部会は,筋量の減少,筋力の低下,そして身体機能の低下に基づいてサルコペニアを診断するよう推奨している2,3.2018年にヨーロッパ作業部会によって改訂された合意文書では,「筋質」という言葉が新たに登場した.そこでは,「筋質を日常的に診療するための評価方法に関するコンセンサスは存在しないが,将来的には,サルコペニアの治療を選択するための道筋を示したり,治療の効果を評価したりするのに役立つであろう.」と明記されている.</p><p>筋質は,1)筋サイズ,2)筋線維タイプ,3)筋構造,4)筋有酸素性容量,5)骨格筋に浸潤した脂肪組織,6)筋線維化,そして7)神経・筋の活性化などの規定要因によって構成され,筋機能の全容を解明し説明するための多義的な概念として形成されつつある.しかし,統一された定義や標準化された評価方法はなく,様々な研究者が,興味のある筋質の一側面に着目して研究を進めている.筋質の評価方法には,コンピュータ断層撮影(computed tomography:CT)検査や磁気共鳴画像(magnetic resonance imaging:MRI)検査,生体電気インピーダンス分析法,超音波法などが含まれるが,これらを筋質マーカーとして用いた観察・介入研究はまだまだ少ない.</p><p>本稿は,筋質研究の歴史的変遷,筋質の定義,評価方法,観察研究,介入研究に関する知見を集約し,筋質研究の現状をまとめた.その上で,今後目指すべき研究の方向性として,筋質の1)定義と評価方法の標準化,2)診断・予後・代替マーカーとしての妥当性と臨床的有用性の検証,3)予防・治療方法の確立を明記した.本稿を活用することで,筋質の概念整理,筋質を評価するためのフレームワークの形成,観察・介入研究におけるナレッジギャップの発見に繋がれば幸いである.</p>

収録刊行物

参考文献 (54)*注記

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