大阪府中河内郡堅下村における高級葡萄生産の実現過程―明治期の篤農家の実践に着目して―

書誌事項

タイトル別名
  • Realization Process of Luxury Grape Production in Katashimo Village, Nakakawachi County, Osaka Prefecture: Focusing on Progressive Farmer Practices in the Meiji Era

抄録

<p>都市化と産業化が進行した近代日本では,果物の生産と産地が拡大を遂げた。大都市の遠隔地で鉄道を用いた輸送園芸が展開した一方で,近郊園芸も大都市の周辺で存続または拡大を遂げた。近郊園芸を代表する果物の1つである葡萄の産地のなかでも,大阪府堅下村(現柏原市)は山梨県や岡山県の産地などよりも早期に葡萄への専門化が図られ,より高価に取引される高級葡萄の生産を達成したことが指摘されている。既往研究では,綿作や他の果物生産からの転換が進められたこと,技術改良や流通改善に地域の篤農家が活躍したことが解明されている。本稿ではこれらの事象を個別に検討するのではなく,特定の篤農家の生業活動全体の実践を通じて,高級葡萄生産がいかにして実現に至ったのかを検討することを試みた。その結果,高級葡萄生産が確立した背景には,家の生業内で山稼ぎや養蚕・畑作を縮小して葡萄生産に集中したことが確認された。そして,篤農家たちは葡萄生産への専門化を進め,村落内で家同士の関係性に基づきながら技術交流を促し,高級葡萄生産を支える高い技術を培った。さらに彼らは,他の生産者への金銭の貸与や,仲買人・問屋・運送会社との主体的な交渉や利害関係の調整を通して高級葡萄生産の拡大に寄与していた。</p>

収録刊行物

  • 人文地理

    人文地理 75 (1), 3-24, 2023

    一般社団法人 人文地理学会

参考文献 (1)*注記

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