信念対立解明アプローチと栄養理学療法により日常生活動作能力が向上した悪液質を伴う慢性閉塞性肺疾患症例

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>慢性閉塞性肺疾患(COPD)では、悪液質、サルコペニア、骨粗鬆症関連骨折などを合併しやすく、それにより日常生活動作能力(ADL)や活動性が低下する。また、活動に対する不安や恐怖心が強くなり、離床やADLの向上に難渋し、そのことで医療者と患者間で信念対立が生じることがある。今回、離床に難渋した脊椎圧迫骨折と悪液質を伴うCOPD患者に対し、栄養理学療法と信念対立解明アプローチ(DAB)を実施し、機能維持とADL向上を認めた症例を経験したので報告する。</p><p>【方法】</p><p>症例89歳、男性。身長152cm、受傷前体重35kg、BMI15.1。診断名:第2腰椎圧迫骨折。既往歴:COPD、骨粗鬆症。現病歴:X年2月7 日、自宅内で酸素ボンベを持ち上げた際に腰痛が出現した。2月9 日に腰痛が増強し、当院に入院した。初期評価では、MRC息切れスケール5、腰痛NRS8/10、下腿周径(右/左)23.5cm/23.5cm、握力18.5kg、下肢筋力4レベル、エネルギー摂取量800kcal、蛋白質摂取量25g、FIM43点。BMI低値、筋肉量減少、筋力低下、食欲低下を認めたため、悪液質と判定した。屋内歩行自立を目標に、ベッドサイドで筋力トレーニングを中心に実施した。経過として、エネルギー・蛋白質摂取量の低下を認めたため、プロテインパウダーと分岐鎖アミノ酸含有栄養剤を追加した。14病日には疼痛が軽減し、離床を図ろうとしたが、疼痛や呼吸苦の訴えと恐怖心が強く、離床に対し拒否を示した。また、「歩きたくない」「余計なことはしたくない」などの発言があった。一方、病棟スタッフは「活動量を増加させ、ADLを向上させたい」と志向し、患者の行動を意欲低下と捉えたため信念対立が生じたと考えた。それに対しては傾聴を行ない、患者とセラピストのそれぞれの状況、目的、関心を明らかにした。</p><p>その中で「四つ這い位での移動はつらくなく、出来ると思う」といった発言があったため、「四つ這い位で自宅内を移動する」ことを目標とした理学療法に変更した。</p><p>【結果】</p><p>25病日のDAB導入後、四つ這い練習などの動作練習を行なうなかで、徐々に離床への拒否は減少した。「また歩いてみたい」との発言があり、歩行練習も実施出来るようになった。38病日、腰痛はNRS3/10、下腿周径22.0cm/22.0cm、握力18.0kg、下肢筋力4レベル、エネルギー摂取量1300kcal、蛋白質摂取量55g、FIM75点、歩行器歩行が可能となり、自宅退院した。</p><p>【結論】</p><p>悪液質や骨粗鬆症関連骨折を伴うCOPD患者は、リハや離床に拒否を示すことで機能やADLが低下することがあり、それに対しては栄養理学療法やDABが有用であることが示唆された。</p><p>【倫理的配慮、説明と同意】</p><p>発表に関して、本人に目的及び内容を説明し同意を得た。</p>

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