運送業における腰痛対策の取り組みについて~1年間の指導の結果~

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>近年、道路貨物運送業(以下、運送業)の腰痛(休業4日以上)発生率は業種 全体の10.7%を占め、業界第3位の腰痛発生率となっている。この「職業性腰痛」の発 症は一向に減少する傾向が見られず、労災補償制度の中でも最も頻発する業務上疾病と認識されている。しかし、本邦における運送業にフォーカスした論文は少なく、発生要因について確立されていない印象を受ける。今回、我々は運送業における腰痛指導の機会を得、2019年から1年間の予防の取り組みにより、運送業の腰痛に対して腰痛指導や運動指導の効果について、若干の興味ある知見を得たためここに報告する。対象として、本研究への文書同意が得られた運送会社で行う。用意したアンケート調査に同意があった70名(男性70名、女性0名)を対象とした。</p><p>【方法】</p><p>企業に月2回の訪問を行い、腰痛対象者には腰痛指導(予防の知識、ストレッチ方法)と運動習慣の必要性について指導を行った。調査はアンケート方式で行い、初期評価を2019年3月から2019年5月、最終評価を2020年3月から2020年5月とし、1年間の前向き研究を行った。アンケート内容として、1.年齢、2.腰痛の有無、3.運動習慣の有無、4.腰痛の程度、5.腰痛罹患年数の5大項目と詳細内容についての小項目で構成した。</p><p>【結果】</p><p>最終評価において、対象者の平均年齢は46.0歳、70名中28名(40.0%)が腰痛ありと回答し、初期評価時より7.7%の減少を認めた。運動習慣ありと答えた方は70名中16名(22.9%)と初期評価時より12.1%増加しており、腰痛ありと答えた方で運動習慣があったのは4名(14.3%)と前回より4.6%上昇が見られた。腰痛の程度はNRS(Numeric rating scale)数値評価スケールで行い平均5.1と9.1%減少、「腰痛があり指導を受けた」と答えた方は10.6%向上が見られた。腰痛罹患年数は平均16.0年と初期評価時と同様に長く罹患している傾向にある事が分かった。</p><p>【結論】</p><p>今回の結果より、1年間の腰痛予防指導により腰痛罹患者の減少、運動習慣の向上、腰痛程度の減少に効果を示した事が明らかとなった。しかし、腰痛に罹患し運動習慣がある者の人数が増えており、運動指導を適切に理解しているか指導方法と動作確認が必要であると感じる結果となった。今後は腰痛予防に関して、適切な指導方法について考察を行っていきたい。</p><p>【倫理的配慮、説明と同意】</p><p>事前に運送会社の代表者や対象者より調査とデータ開示の承認 を得ており、本研究は対象者に研究内容について十分説明し、対象になることについて同意 を得た。</p>

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