関節リウマチ患者におけるロコモティブシンドロームの有病率と関連因子の検討

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>関節リウマチ(RA)は多関節炎を主徴とする慢性炎症性疾患であり,関節炎と関節破壊による運動機能障害をきたす.一方,ロコモティブシンドローム(ロコモ)は加齢を基盤とした運動機能障害により移動能力が低下した状態と定義され,本邦における地域在住者の有病率は11.9%であったと報告されている.RA患者においては,ロコモの有病率はより高いと推測されるが,RA患者を対象としたロコモの研究は少ない.</p><p>本研究の目的は,RA患者におけるロコモの有病率を調査するとともに,ロコモと関連する因子を検討することである.</p><p>【方法】</p><p>2019年6月~2020年1月の期間,当院に通院していたRA患者173例を対象とした.評価項目は,患者背景として年齢,性別,Body Mass Index(BMI),罹病期間,薬物療法(メトトレキサート(MTX),副腎皮質ステロイド(PSL),生物学的製剤(bDMARD),ヤヌスキナーゼ阻害薬(JAKi))の有無,臨床評価としてC反応性蛋白(CRP),疾患活動性スコア(DAS28-ESR),疼痛視覚的評価スケール(疼痛VAS),およびRA患者における身体機能障害指数(HAQ-DI)を調査した.また,ロコモの評価には25-question Geriatric Locomotive Function Scale(GLFS-25)を用い,16点以上をロコモと判定した.統計解析は,ロコモ有無の2群間で比較し,名義変数はFisherの正確検定を,連続変数はMann-WhitneyのU検定を用いた.単変量解析で有意となった変数を独立変数とし,ロコモ有無を従属変数としたロジスティック回帰分析にて解析した.さらに関連因子として抽出された項目に関して,ROC 解析を行いカットオフ値を算出した.統計ソフトは EZR(ver.1.42)を用い,有意水準は5%未満とした.</p><p>【結果】</p><p>ロコモの有病率は37.6%であった.ロコモ有無別の群間比較では,単変量解析で年齢,PSL,CRP,DAS28-ESR,疼痛VAS,HAQ DIに有意差を認めた.さらに,これらを独立変数としたロジスティック回帰分析では,年齢がオッズ比1.11(95%信頼区間 1.04-1.18, p=0.001),HAQ-DIが38.1(95%信頼区間 8.89-164.00, p<0.001)と統計学的に有意であった.また,ROC曲線より得られたカットオフ値は,年齢が63歳(感度51.9%,特異度92.3%),HAQ DIが0.375(感度87.0%,特異度83.1%)であった.</p><p>【結論】</p><p>RA患者におけるロコモ有病率は高く,年齢とHAQ-DIがロコモ合併に関連する因子として挙げられた.年齢のカットオフ値は63歳であり,RA患者においては非高齢者であっても運動療法の介入を要する可能性がある.また,HAQ-DIのカットオフ値は0.375であり,RAにおける治療目標のひとつである機能的寛解のHAQ-DI≦0.5を達成していてもロコモを合併している症例が存在しうることを考慮すべきと考えられた.</p><p>【倫理的配慮、説明と同意】</p><p>本研究は鳥取赤十字病院の倫理審査委員会の承認を得て実施した(鳥医倫発第87号).また,「ヘルシンキ宣言」および「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」を遵守して実施した.</p>

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