デスクワークに従事している非特異的慢性頚部痛患者の能力障害と疼痛関連スコア,頚部機能の関連性

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>本邦における頚部痛有愁訴者は多く,労働衛生上の問題が指摘されているが,デスクワークに従事している慢性非特異的頚部痛(Chronic non–specific neck pain ; CNSNP)による能力障害に関連する因子は検討されていない。さらに,CNSNPは機能障害だけではなく,心理社会的要因により病態を複雑化させていることから,器質的・機能的因子だけでなく多角的な評価・介入が必要で ある。</p><p>そこで本研究では,Neck Disability Index(NDI)を用いて,デスクワークに従事しているCNSNP患者の能力障害に関連する疼痛関連スコアと頚部機能を調査し,理学療法介入の一助とすることとした。</p><p>【方法】</p><p>本研究は,当院において頸椎疾患の診断を受け理学療法適応となったCNSNP患者50名(40.6±10.4歳)の横断研究とし,CNSNP 患者の取り込み基準は,発症機転が無く,3ヶ月以上頚部痛を呈しているものとした。初回理学療法施行時に,基本情報として罹患期間(月),運動習慣,デスクワーク時間,仕事のやりがいの程度を聴取した。さらに,能力障害としてNDI,疼痛関連スコアとして破局的思考(Pain Catastrophizing Scale ; PCS),運動恐怖感(短縮版Tampa Scale for Kinesiophobia;TSK),疼痛自己効力感(Pain Self Efficacy Questionnaire;PSEQ),抑うつ状態(短縮版Patient Health Questionnaire;PHQ),中枢性感作(Central Sensitization Inventory ; CSI)を,質問紙票にて評価した。頚部機能は,頚椎関節可動域(CROM)を測定した。尚,CROMは3名が測定し,事前に検討した信頼性はICC(1,1)とICC(2,1)は0.70以上であった。統計解析は,CNSNP患者の能力障害に関連する疼痛関連スコアと頚部機能を分析するため,重回帰分析を実施した。モデル1としてNDIを従属変数とし,疼痛関連スコア(PCS,CSI,TSK,PSEQ,PHQ)と頚部機能(CROM)を目的変数とした重回帰分析を実施した。モデル2はモデル1で有意な関連を示した項目に交絡因子(年齢,性別,罹病期間)を,モデル3では調整因子(デスクワーク時間,仕事のやりがいの程度,運動習慣の有無)を,段階的に強制投入し,影響力を検討した。さらに統計解析後にG*powerを使用し,統計モデルの検出力分析を実施した。</p><p>【結果】</p><p>モデル1(自由調整済R2 =0.51)でNDIと有意な関連性を認めた項目は,PSEQ(p =0.01,標準回帰係数 =-0.36),CSI(p =0.03,標準回帰係数 =0.30)であった。モデル1より有意な関連性を認めたPSEQ,CSIに交絡因子で調整したモデル2,さらに調整因子を加えたモデル3と段階的に統計解析した結果,有意な関連性が維持された。サンプルサイズの検出力分析の結果,P=0.99と十分な検定力が得られた。</p><p>【結論】</p><p>デスクワークに従事しているCNSNP患者の能力障害にPSEQとCSIが関連していたことから,CNSNP患者の能力障害を理解する上で疼痛自己効力感などの認知的側面,中枢性感作などの生理学的側面の影響を考慮する必要性が示唆された。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は医療法人社団紺整会船橋整形外科病院の倫理委員会で承認(承認番号2020038)を得て行った。また,全対象者に研究内容の説明を行い,書面で研究への参加の同意を得たうえで実施した。</p>

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