身近な産業理学療法の活動報告 ~職場における腰痛対策への協力~

DOI
  • 太田 直樹
    千葉県千葉リハビリテーションセンター 地域支援センター 地域リハ推進部

抄録

<p>【はじめに】</p><p>本邦において、腰痛は国民生活基礎調査(2019)によると有訴者率が男性では1位、女性では2位の代表的な健康課題の1つである。日本理学療法士協会が「職場における腰痛予防宣言」のキャンペーンを実施するなど、腰痛対策への理学療法士の参画について関心が高まっている。今回、身近な産業理学療法として職場の腰痛対策に協力したので、活動内容を報告する。</p><p>【背景】</p><p>千葉県千葉リハビリテーションセンターは、110床のリハビリテーション医療施設、定員125名の医療型障害児入所施設、その他外来診療などを行う総合リハビリテーションセンターである。職員は、医師、看護師、理学療法士の他、保育士や社会福祉士など多職種が勤務している。職場における腰痛対策は、総務部の健康管理部署(以下、担当)が担っており、毎年1回の腰痛頸肩腕痛検診(1次検診:検診表、2次検診:医師の診察)と職場巡視等を実施している。今回、担当スタッフから腰痛対策の見直しについて協力要請があった。</p><p>【取り組み】</p><p>まず、担当スタッフと産業医、筆者で対策の現状の確認、課題抽 出を行った。明らかになった課題は①現在の検診表では腰痛発生の状況把握はできるが、腰痛リスク評価をすることが難しいこと②1次検診データを元にした腰痛対策の設定があがった。特に① について検診表の設問をどのようにするか、産業医から意見を求められた。次に、検診表の改訂に着手した。既存の検診表は腰痛 の有無、痛みの程度、腰痛が発生する場面などの項目がある。新 たにSTarT Back Screening Tool、生活習慣、Somatic Symptom Scale-8(SSS-8)を追加した。また、1次検診実施後のデータ分析に協力し、職場全体の課題抽出のアドバイスを行なった。</p><p>1次検診は全職員(産休、育休、療休を除く538名)を対象に職場内のポータルサイトで実施し、404件の回答を得た(回収率75%)。回収データのうち、データの利用について同意があった378件を分析対象とした。腰痛の有訴者は49%であり、有訴率の高い職種は生活援助員、保育士、理学療法士・作業療法士の順であった。また、腰痛が生じる業務は移乗介助、重量物の運搬、事務作業(デスクワーク)の順で多かった。本結果を職場内の産業保健を統括している委員会へ報告し、職場内への浸透を図った。現在、職場巡視の実施方法の見直しを含めた対策を検討している。</p><p>【考察・所感】</p><p>今回の取り組みを通じて、身近な場所・仲間の健康を守ることは理学療法士にとって重要な役割と考えた。身近な職場に関わることは、職場内の関係者と顔の見える関係があらかじめ構築されているため、外部の企業へ関わることに比べると、取り掛かりのハードルが低いように思える。今後、各部署の業務特性に応じた対策をハード・ソフトの両面から提案していきたい。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本報告で使用した検診表のデータについては、検診表にデータの公表の可否について回答を得る設問をし、同意を得たデータのみを使用した。</p>

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