歩行時の加速度変化から認知機能低下を推測できるか?お達者健診研究

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>歩行速度と認知機能の関連については数多く報告されている。Vergheseら(2014)は12年間のコホート研究で認知機能低下の主訴よりも歩行速度低下が認知症の発症をよく説明することを示した。また歩行速度だけでなく歩幅や歩調が認知機能低下と関連するという報告も多い。そこで本研究では、人工知能を使って歩行時の加速度変化を分析することで認知機能低下を判別できるかどうかを検証することを目的とした。</p><p>【方法】</p><p>2011年に包括的高齢者健診、お達者健診に参加した地域在住高齢者のうち歩行時の加速度測定が行えた901名を対象とした。男性が39.4%、年齢は73(5)歳、高血圧45.4%、脳卒中5.4%、心臓病15.7%、糖尿病11.7%の既往症を持つ集団であった。包括的高齢者評価に加えて、下腿部に6Dfセンサー(マイクロストーン社製、佐久)を装着し10m歩行時の加速度変化を記録した。通常・最大の歩行速度でそれぞれ2施行行った。歩行開始から停止までの加速度時系列データをウェーブレット解析で2Hzから15Hzまでのスカログラムを作成した。人工知能には学習済み人工知能であるNASNet Large を用い転移学習を行った。認知機能低下者の割合が少ないため、 健常者と認知機能低下者が同数になるようにランダムにオーバーサンプリングし、331pixelの画像に対し50ピクセルの範囲でランダムに上下、平行移動させた学習セットを用意した。バッチサイ ズを64、最大エポック数を100、初期学習率を1e-4とし、モーメ ンタム項付き確率的勾配降下法を用い学習させた。データ解析に はMatlab2022a(Mathworks社製、Natick)を用いた。2施行目のデータで分類精度の検証を行った。認知機能低下疑いはMMSE23点以下とした。統計解析にはSPSSver27を用いた。なお、本研究は所属機関の倫理委員会の承認を得た(2017K34)。</p><p>【結果】</p><p>1施行目のデータのうち20%を検証データとして学習を行ったところ、学習後のモデルによる検証データの分類精度は感度0.77、特異度0.91であった。2施行目の独立したデータで検証したところ感度・特異度はそれぞれ0.296、0.906であった。分類確率をもとにROC分析を行うとAUCが0.727であった。</p><p>【結論】</p><p>今回の結果では、感度が低く認知機能低下を推測できるものではなかった。一方、特異度は高く人工知能によって認知機能低下の無いものを妥当に判定できることが示唆された。学習データ数を増やす、CNN型人工知能とRNN型人工知能を組み合わせるなどで分類精度を上げて検証を深めたい。</p><p>【倫理的配慮、説明と同意】</p><p>本研究は所属機関の倫理委員会の承認を得た(2017K34)。全ての参加者は口頭による説明を受け書面による同意をした。</p>

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