社会活動が少ない高齢者でもウォーキング習慣により要介護発生リスクは抑えられる

DOI
  • 片山 脩
    国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター 独立行政法人 日本学術振興会
  • 李 相侖
    国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター
  • 裵 成琉
    国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター
  • 牧野 圭太郎
    国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター 独立行政法人 日本学術振興会
  • 千葉 一平
    国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター
  • 原田 健次
    国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター
  • 新海 陽平
    国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター
  • 森川 将徳
    国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター
  • 冨田 浩輝
    国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター
  • 島田 裕之
    国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター

抄録

<p>【はじめに】</p><p>要介護認定者は年々増加しており一次予防が重要となる。身体活動や社会活動への参加は障害発生リスクを軽減することが明らかにされている(Bull, 2020; Hikichi, 2015)。新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、高齢者の身体活動時間や歩数が減少し要介護発生率の増加が懸念されている(Yamada, 2020; Tison, 2020)。身体活動に関わる運動習慣と社会活動の減少も予想されることから、両者の関連を一緒に検討することは予防理学療法にとって重要と考えられる。そこで、新型コロナウイルス感染症の感染拡大下において、社会活動が減少しても、高齢者が継続しやすいとされるウォーキング(Morris, 1997)の習慣により要介護発生リスクを抑えることができるか検証した。</p><p>【方法】</p><p>高齢者機能健診に参加した60歳以上の地域在住高齢者4167名のうち、認知症、パーキンソン病、脳卒中の病歴がある者、ベースライン時点での要介護認定者等を除外した2873名を対象とした。ウォーキング習慣の有無は質問紙にてウォーキングを週3日以上と未満で2群に分けた。社会活動は2名以上で行う活動について過去1年間に1回以上参加した場合を参加と定義し、社会活動への参加状況を12項目の社会活動のうち、平均参加項目数で5項目以上を参加が多い群、未満を参加が少ない群とした。ウォーキング習慣の有無による要介護発生率の群間差は、要介護発生率をKaplan-Meier法で推定し、Log-rank検定により検証した。また、ウォーキング習慣の有無と要介護発生との関係を社会活動の参加状況別に検討するため、ウォーキング習慣の有無を独立変数、交絡因子を調整変数としたCox比例ハザード回帰分析を行った。危険率5%を有意とした。</p><p>【結果】</p><p>平均追跡期間35.1±6.4ヶ月での新規要介護発生者は133名(4.6%)であった。ウォーキング習慣の有無による発生率は、それぞれ19.0/1000人年と27.9/1000人年であった。ウォーキング習慣のある群では、要介護発生リスクの有意な低減を認め、ハザード比は0.67(95%CI 0.46―0.96, p<.05)であった。ウォーキング習慣による要介護発生リスクを社会活動の参加状況別にみると、社会活動への参加が少ない群では0.63(95%CI 0.40―0.98, p<.05)、多い群では0.71(95%CI 0.36―1.38, p = .31)であり、社会活動への参加が少ない群で顕著にリスクの低減を認めた。</p><p>【結論】</p><p>社会活動への参加が少ない群ではウォーキング習慣により要介護発生リスクが抑えられる可能性が示唆された。本研究結果は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大下における予防理学療法において、ウォーキングの推奨が社会活動の減少した高齢者には、より重要である可能性を示唆する結果と考えられる。</p><p>【倫理的配慮、説明と同意】</p><p>本研究は、著者所属機関の倫理・利益相反委員会の承認を受けて実施した。ヘルシンキ宣言の趣旨に沿い、対象者には本研究の主旨および目的を口頭と書面にて説明を行い、書面にて同意を得た上で本研究を実施した。</p>

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