歌ことば「あまごろも」考 : 浮舟の歌一首

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  • On Waka-Word Ama-goromo
  • ウタコトバ 「 アマゴロ モ 」 コウ : ウキフネ ノ ウタ イッシュ

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抄録

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[要約] 『源氏物語』の手習巻において、出家を遂げた浮舟は自分の一周忌の布施となる女装束を目にして、「尼衣かはれる身にやありし世のかたみに袖をかけてしのばん」という歌を詠むが、「尼衣」には「かぐや姫の天の羽衣」が重なると考える説がある。根拠とされるのは、手習巻の中に『竹取物語』の引用が見られることであった。これを受けて本稿では、平安和歌の用例を検討して、「あまごろも」には雨衣・海人衣・天衣・尼衣の四つがあり「尼衣」は珍しいこと、和歌の「尼衣」は他の「あまごろも」と掛詞を形成する場合が多いことを確認して、「尼衣/天衣」が掛詞であるとする説を補強した。かぐや姫は天衣を身に着けて、地上の絆を断ち切って昇天したが、浮舟は尼衣(天衣)をまとってもなお、過去の記憶に囚われ続けるのである。なお本稿は、別稿「浮舟の最後の歌「尼衣かはれる身にや」の解釈―「や〜む」という語法を中心にして―」(二〇二四年三月刊行予定)と相補的な関係にある。

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