重症COVID-19診療の現状と今後の課題

DOI
  • 大藤 純
    徳島大学大学院医歯薬学研究部救急集中治療医学分野

書誌事項

タイトル別名
  • Severe COVID-19 : current challenges and future perspectives

説明

<p> 2019年に中国の武漢で発生した新型コロナウイルス感染症(coronavirus disease 2019:COVID-19)は,瞬く間に世界中に蔓延した。世界各国で,多数の重症患者が発生し,医療体制は崩壊し,600万人を超える犠牲者を生み出した。本邦でも,第4波から第5波までは,国民へのワクチンが十分に普及しておらず,全国的に重症患者数が急増した。本邦のICUに準ずる病床数は,人口10万人あたり13.5床(米国35床,ドイツ29床程度,2020年当時)と世界的にも少なく,医療は逼迫した1)。徳島大学病院でも,多くの人工呼吸管理を要する重症COVID-19患者を受け入れ,COVID-19流行の度に病床は満床状態となった。第4波から第5波にかけての患者の多くは,肥満,高血圧,糖尿病などの基礎疾患を有した働き盛りの中高年男性であった。当時,普段は健康に生活していた患者がsevere acute respiratory syndrome coronavirus 2:SARS-CoV2感染を契機に重症の急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome : ARDS)を発症し,連日搬送されてくる現状を目の当たりにすると,とても季節性インフルエンザ感染症と同程度の重症化リスクとは思えなかった。</p><p> 搬送された患者の多くは重度の低酸素血症と努力呼吸を呈していた。陰圧室という隔離空間で,感染防護服(personal protective equipment : PPE)を着用した状態での気管挿管やルート確保,高度な医療機器を用いた呼吸・循環管理は困難を極めた。筋弛緩薬併用下での肺リクルートメント手技,低用量換気や中等度以上のpositive end-expiratory pressure : PEEPを用いた肺保護戦略,1日16時間以上にも及ぶ腹臥位療法を連日実施することで,致死的低酸素血症を回避した。エアロゾル発生を最小限とする挿管・抜管手技,多臓器障害患者での体外式膜型人工肺(extracorporeal membrane oxygenation : ECMO)や持続的腎代替療法(continuous renal replacement therapy : CRRT),二次感染症や遷延する肺線維症への対応など,多くのタスクを実施し,救命に繋げることができた。また,陰圧室内外での医療安全を支える設備面の充実,重症患者管理ができる医療従事者の育成や多職種連携を強化することもできた。</p><p> 本稿では,重症COVID-19の動向と徳島大学病院での重症COVID-19診療への取り組み,およびCOVID-19関連ARDSに対する人工呼吸管理について紹介する。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390015191534391040
  • DOI
    10.57444/shikokuactamedica.79.1.2_13
  • ISSN
    27583279
    00373699
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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