個人内関係の推測と統計モデル:ランダム切片交差遅延パネルモデルを巡って

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タイトル別名
  • Statistical Models for the Inference of Within-person Relations: A Random Intercept Cross-Lagged Panel Model and Its Interpretation

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説明

<p>縦断的に測定された多変数間の変化の関係を推測する目的で,交差遅延パネルモデル(cross-lagged panel model:CLPM)が心理学を中心に広く利用されてきた。同時に,個人間の異質性を統制して個人内の変化のプロセスである個人内関係を捉えることは,縦断データに基づく因果推論の主幹をなすものとされている。個人内関係の推測上の限界からCLPMを批判したHamaker, Kuiper, & Grasman(2015)以後,時間的に安定した個人差としての特性因子を組み込んだランダム切片交差遅延パネルモデル(random intercept CLPM:RI-CLPM)が,心理学領域を中心に急速に普及している。一方で,個人内関係の推測のために利用可能な統計モデルは多くあるが,その違いは必ずしも明確に区別されておらず,また個々の統計モデルの解釈やその選択を巡る議論は現在でも活発になされている。本稿では,個人内関係を推測するための一つの有効な方法としてRI-CLPMを位置付けてその適用の実際を解説し,そして他の統計モデルとの数理的・概念的関係性やそれらの適用上生じうる問題点を整理する。特に,RI-CLPMの特性因子は個人内変動とは無相関な量と仮定する点に個人間の異質性を表現する上での特徴があり,またそれが他の有力な選択肢としての動学的パネルモデルとの数理的関係性を結ぶ接点にもなることを指摘する。</p>

収録刊行物

  • 発達心理学研究

    発達心理学研究 33 (4), 267-286, 2022

    一般社団法人 日本発達心理学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390015191534520064
  • DOI
    10.11201/jjdp.33.267
  • ISSN
    21879346
    09159029
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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