淡路島ニホンザル集団における集団の内部分裂に関する報告

DOI
  • 貝ヶ石 優
    京都大・高等研 日本学術振興会 一般社団法人淡路ザル観察公苑
  • 延原 利和
    一般社団法人淡路ザル観察公苑 淡路島モンキーセンター
  • 延原 久美
    一般社団法人淡路ザル観察公苑 淡路島モンキーセンター
  • 山田 一憲
    一般社団法人淡路ザル観察公苑 大阪大・人間科学

書誌事項

タイトル別名
  • Report on the internal division of a group in a free-ranging group of Japanese macaques at Awajishima

抄録

<p>ニホンザルは凝集性が高く安定的なメンバーシップを持つ集団を形成する。しかしそれらの集団では、時に1つの集団が複数の集団に分裂することがある。本研究では、淡路島に生息する餌付け集団(淡路島集団)で観察された、集団内で部分的な分裂が起きた事例を報告する。淡路島集団において、2022年11月に、集団内の複数個体が参加する激しい闘争が観察された。これ以降、本集団では互いに敵対的な2つの小集団が観察されるようになった。2022年12月(25日間)、2023年1月(16日間)および3月(15日間)に、小集団の構成、および小集団同士の出会い場面での交渉を記録した。観察は朝9時ごろから夕方5時ごろまで行い、餌場内で観察された成体を全て記録した。既に餌場内にサルがいる状況で、さらにサルがまとめて入場してきた際には、異なる小集団が入場したと定義し、先に餌場にいた個体の反応、小集団間での敵対的交渉の有無を記録した。異なる小集団の入場前後を別のセッションと定義し、個体名の記録はセッションごとに分けて行った。社会ネットワーク分析の結果、餌場での共在ネットワーク内に2つのコミュニティ(密接に関わる個体のクラスター)が検出された。一方、ネットワーク全体は2つに分断されておらず、個体間の間接的な繋がりは維持されていた。個体レベルでの分析から、どちらの小集団とも親和的な関係を持つ中立的な個体が多く存在し、それらの個体によって集団全体のまとまりが維持されていることが示唆された。小集団同士の出会い場面では、敵対的な小集団間では集団間闘争が観察されたのに対し、中立的な個体との出会いの際にはcoo callを含む親和的交渉が観察された。さらに共在ネットワークの構造は1月から3月にかけて高い類似度を示し、上記の状態が長期間にわたり安定的に維持されていることが示唆された。これらのことから、淡路島集団は、完全な集団分裂ではなく、集団内部分裂と呼べるような状態にあるのかもしれない。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390015421165988736
  • DOI
    10.14907/primate.39.0_33_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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