山口県周防大島町・大水無瀬島のニホンザル:近年の人との相互行為と自動撮影カメラを用いた社会構造の推定
書誌事項
- タイトル別名
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- Japanese Macaques in Ōminase Island, Suō- Ōshima, Yamaguchi: Interactions with Humans in Recent Years and Estimation of Social Structure using Camera Traps
抄録
<p>無人島・大水無瀬島(約0.7km2)には、1987年の放獣以降、ニホンザル(以下、サル)が生息している。前年度の本学会大会において、サルの来歴や島の歴史を紹介した。続報である本発表では、1)人と遭遇した際のサルの態度、2)自動撮影カメラを用いて推定しうる社会構造に焦点を当てる。1)については、地元の方々から聞いた遭遇談と、山口県東部海域にエコツーリズムを推進する会(以下、東部エコツー)が上陸した際の藤本による記録(2012〜23年)、カラスバトの個人調査のため上陸した原の記録(2013年)、サルの追跡と観察を試みた花村の記録(2022〜23年)を用いる。少なくとも2010年代前半までは、船釣り中の人がサルにみかんを与えたり上陸した釣り人がサルに弁当を取られたりしており、場合によってはサルが上陸者を取り囲んで威嚇してくることもあった。2012年以降、東部エコツーが毎年1〜7回上陸し、とくにサルを捜索したりはせずに島の内部まで踏査してきたこと、サルに食物を一切与えなかったことにより、サルは上陸者を避けたり姿を現さずに威嚇したりするようになった可能性がある。ただし、一日中サルを捜索したり連日で上陸したりした場合、人が休んでいるとコドモやワカモノが様子見に接近してくることもある(追跡を試みると逃げる)。また、船で近づくだけか上陸するかや、上陸者の人数・行動に応じて、サルの態度は大きく異なるようだ。あまり人慣れの進んでいないサルと人の相互行為について改めて考えてみたい。2)島の尾根沿いの獣道と島の対角線上に位置する2つの浜に計3台設置した自動撮影カメラによって、2022年4月から約1年間で数千枚の画像が記録できた。本抄録執筆時の直前に直近4ヶ月分の記録を回収したばかりであり具体的な結果は発表当日に紹介するが、個体識別を試みてサルの群れの数やサイズ、性年齢構成を推定するとともに、行列の記録やクーコールの発声個体とその文脈から社会構造についても考察をくわえたい。</p>
収録刊行物
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- 霊長類研究 Supplement
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霊長類研究 Supplement 39 (0), 41-41, 2023
日本霊長類学会