歯科保健指導にコーチング手法を取り入れるための歯科衛生士研修会の実施と評価

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抄録

<p>(緒言)</p><p> 糖尿病と歯周病の診療における共通点は,両者とも治癒しない慢性疾患で自覚症状に乏しく受診に至らなかったり,受診が継続しなかったりすることである.糖尿病診療ではコーチングが導入されているが,歯科領域ではコーチングに関する報告は少ない.</p><p> われわれは,歯科医療の現場の歯科衛生士を対象に,歯科保健指導においてコーチング手法を活用することを目標とし,第2回千葉県立保健医療大学歯科衛生士研修会(以下,研修会)を実施した.本研究では,研修会終了後に研修会の評価ならびに今後の希望テーマや要望等を明らかにする目的で質問紙調査を行った.質問紙調査結果から,今回実施した歯科衛生士研修会の振返りと,今後開催する研修会の在り方について検討した.</p><p>(研究方法)</p><p> 研修会は,千葉県歯科衛生士会と千葉県立保健医療大学歯科衛生学科同窓会の協力を得て参加者を募集し(32名の参加者),令和3年2~5月に計4回の研修会を実施した.</p><p> 第1回目「糖尿病に関する知識」医師(糖尿病専門医,コーチングインストラクター)により,糖尿病の病態や治療法について</p><p> 第2回目「コーチングについて」第1回と同一講師によりコーチングの概要,慢性疾患へのコーチングの活用について</p><p> 第3回目「歯周病に関する知識」歯科医師(歯周治療担当)により,日本歯周病学会のガイドラインを基に歯周病の特徴について</p><p> 第4回目「行動から認知度を把握する方法」作業療法士(作業療法士養成校教員)により,歯磨き中の対象者の様子からその対象者の認知レベルに合わせた歯科保健指導法についてであった.</p><p> 以上の研修会終了後に,参加者に対して郵送法による無記名,一部記入式多肢選択式質問紙調査を行った.質問紙調査項目は,年齢,勤務状況,研修会全体の満足度,各項目の満足度,次回以降の研修会で希望するテーマ,研修会に対する要望とした.</p><p> 本研究は千葉県立保健医療大学研究倫理審査委員会の承認(2020-13)を得て実施した.</p><p>(結果)</p><p> 令和2年度の本研修会は当初,対面の研修会として,血糖値の簡易測定等の演習やコーチングのロールプレイ等を計画していた.しかし,新型コロナウイルス感染症の感染拡大状況からWeb 開催に変更し,演習やロールプレイを中止した.</p><p> 研修会後に実施した質問紙調査の対象は24名で19名(79.2 %)から回答を得た.主な調査結果について研修会の全体的満足度は「とても満足」13名(68.4%),「やや満足」6名(31.5%)で,理由は参加しやすい時間帯だった,興味のあるコーチングについて学ぶことができた等であった.希望するテーマは高齢者歯科,全身疾患,摂食嚥下機能,多職種連携等が挙げられた.</p><p>(考察)</p><p> 歯科衛生学科では大学の社会貢献の一つに,歯科衛生士の人材育成として,令和元年度から勤務する歯科衛生士を対象に研修会を開催している.令和2年度の研修会は,新型コロナウイルス感染症の感染状況により,演習を含む対面形式からWeb 研修会に変更し,3か月遅れで実施することができた.研修会を継続して対象者がより有意義な情報を得るために,質問紙調査結果から研修会の在り方について検討したところ,Web による研修は新型コロナ感染症に対する感染に対して安全であり,内容については,コーチングについて興味ある内容で,歯周病患者等の歯科保健指導や教育に活用でき,有意義な研修会であったと推察された.参加歯科衛生士が臨床の場で実際にコーチングを活用して歯科保健指導を実践することを望むものである.</p><p> 今後開催する研修会については,参加者の要望をふまえて,参加者が参加しやすいように日程調整をし,高齢者歯科医療等,順序性を有するテーマで研修会を実施する所存である.</p><p>(利益相反)</p><p>本研究に関連し開示すべき利益相反関係にある企業などははい.</p>

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