国際通貨としての円

  • 中曽 宏
    株式会社大和総研 一般社団法人東京国際金融機構 東京大学大学院経済学研究科附属金融教育研究センター
  • 橋本 政彦
    株式会社大和総研

書誌事項

タイトル別名
  • コクサイ ツウカ ト シテ ノ エン

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抄録

<p> 国際通貨としての円の役割は劇的に増してこそいないが,日本の経済規模の相対的低下に比べれば相応の地位を維持している。また,国際金融危機以降,邦銀が基軸通貨のドル建てを中心とする国際金融仲介業務の最大の担い手となったことに加えて,円を含む主要通貨のドルへの転換を非常時においても担保する中央銀行間スワップ網の創設により,円はドル基軸通貨体制を補完する国際通貨としての側面が強まっている。ドルの基軸通貨としての役割に当分は陰りが見えない中,円が独自に国際通貨としての存在感を増していくことは考えにくいが,円は今後も一定の役割を果たし続けていくとみることができよう。現在進行中の日本の国際金融都市構想は,円の国際通貨としての役割を後押ししていくことになるだろう。日本の国際金融センターが,内外の企業のファイナンスの場として機能していくことは,アジア太平洋地域の企業の資金調達を支えることを通じて同地域の持続的経済発展に寄与する。円が国際通貨としての機能を適切に発揮していくためには,決済システムなどの基幹インフラの高度化や,東京市場での資金調達手段の多様化が課題である。わが国経済の持続的発展に向けて,金融面からは,日本の金融機関,円,国際金融センターの役割を一体的に捉えた上で,課題克服に向けて適切に対処していく必要がある。</p>

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