クラフトパルプ製造工程におけるピッチトラブルとピッチコントロール剤による対策

  • 袖山 卓司
    ハリマ化成株式会社 研究開発カンパニー 研究開発センター 製紙用薬品開発室

書誌事項

タイトル別名
  • Pitch Control Agent for the Kraft Pulping Process

抄録

製紙工程において,操業の悪化や品質の低下に繋がるピッチトラブルを抑制することは,大きな課題の一つである。クラフトパルプにおいて,その製造工程や抄紙工程で発生するピッチトラブルの主な成分は木材由来の樹脂成分であり,系中における樹脂量の増加やpHの低下による樹脂成分の不安定化が,その原因となっている。ピッチトラブルを抑制するには洗浄の強化が主な対策となるが,状況によっては対応できない場合があり,このような場合の手段としてピッチコントロール剤の適用が有効となる。このピッチコントロール剤には,タルクや界面活性剤といった複数の種類がある。このため,適用においては,それぞれの特徴に合った使用方法が重要であり,使用方法を誤るとピッチトラブルを解決することができないだけでなく,新たな問題の発生に繋がることもある。<br>当社のピッチコントロール剤「ASシリーズ」は,ピッチを微細な状態で分散させるとともにパルプへ歩留める効果を有している。このため,ピッチが不安定化し粗大化する前に使用いただくことで,その効果を最大限に発揮することができる。クラフトパルプの製造工程においては,O段やEop段といった高pHの工程から,pHが低下するD段直前の洗浄機の落ち口へ「ASシリーズ」を添加することで,ピッチトラブルを効率的に抑制できることが確認されている。またクラフト紙の抄紙工程においても,pHの低下を伴うAlumの添加位置よりも上流側へ「ASシリーズ」を添加することで,ピッチトラブルを抑制できることが確認できている。<br>本稿では,クラフトパルプの製造工程および抄紙工程におけるピッチトラブルと,その対策としてのピッチコントロール剤の適用を述べるとともに,当社ピッチコントロール剤「ASシリーズ」の適用例を紹介する。

収録刊行物

  • 紙パ技協誌

    紙パ技協誌 77 (8), 703-707, 2023

    紙パルプ技術協会

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