インドネシアの文殊菩薩について

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  • Mañjuśrī in Indonesia
  • Manjusri in Indonesia

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抄録

<p> インドネシアにおける文殊菩薩は文殊信仰や密教を考察する上で重要な尊像である.本論では2007年出版の執筆書籍を再考し,インドネシアの文殊菩薩の図像と特徴について述べる.現存作例は鋳造像は現段階で26軀,8-11世紀頃の中部ジャワ地域,東部ジャワ地域,スマトラにみられ,石造像は単独像が中部ジャワのプラオサン寺院に多く,また東部ジャワに1軀が確認できる.鋳造像・石造像ともに右手を与願印,左手には梵夾を載せた蓮茎を執る作例が多い.寺院のレリーフではボロブドゥールの『大方広仏華厳経』「入法界品」やムンドゥット寺院の八大菩薩の内の1軀として8-9世紀頃に建立された中部ジャワ地域の壁面などにみられる.8世紀頃のクルラク碑文では中部ジャワ地域に文殊菩薩の信仰があったことが読み取れ,造像の時期からも8世紀頃には文殊菩薩が中部ジャワ地域を中心に信仰の対象とされた可能性が考えられる.また鋳造像,石造像ともに頭部背後に三日月形がみられ,ボロブドゥールの仏伝図から7歳以下の童子と,ムンドゥット寺院の男女尊のレリーフに,群がる童子に三日月形が表現されることからインドネシアでは頭部背後の三日月形が童子を示す表現である事が導き出せる.また『陀羅尼集経』『文殊師利宝蔵陀羅尼経』などの経典に「文殊は童子形」であることが説かれ,尊像が三日月形のほかに,頭部の髻や獣牙の胸飾,ふくよかな体躯などからも,インドネシアの文殊菩薩は明らかに経典の童子を意図した造像がなされたことがうかがえる.</p>

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