北西太平洋の温帯低気圧化における中緯度偏西風と熱帯低気圧の相互作用に対するストームサイズの影響

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  • Effects of Storm Size on the Interactions between Mid-Latitude Westerlies and Tropical Cyclones during Extratropical Transition in the Western North Pacific

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抄録

<P> 2019年、台風Faxai に伴う局地的な強風、台風Hagibisに伴う広範囲な集中豪雨により深刻な被害が生じた。いずれの熱帯低気圧(TC)も類似した経路をとり、転向後温帯低気圧化(ETR)したが、それらのストームサイズと構造は異なっていた:Faxaiは小さい軸対称なTCであったのに対し、Hagibisは大きい非対称なTCであった。本研究の目的は、TCが温帯低気圧化(ET)する過程において、ストームサイズの違いがTCの構造と総観場の変化にどのように影響しているのかを明らかにすることである。HagibisはFaxaiより多い降水量を広くもたらしている。この大量の降水量に深く関連する大きな非断熱加熱は、対流圏上層のHagibis下流で低渦位(PV)を形成し、リッジを強化する。それに対し、Faxaiの事例では、非断熱加熱が比較的小さく、Faxai下流における低PV域の形成は不明瞭である。事例解析に加えて、ベストトラックと気象庁55年長期再解析データセットによる低気圧位相空間及びコンポジット解析を使って2016年から2020年の北西太平洋のETRした大きい(LA)TCと小さい(SM)TC(それぞれLA-ETR TCとSM-ETR TC)を統計的に比較する。事例解析で見られたように、LA-ETR TCは、SM-ETR TCに比べ、多くの非断熱加熱と下流のリッジの強まりで特徴づけられる。LA-ETR TCは偏西風ジェットの南北振幅を強めながら北上し、非対称構造へと大きく変化する。それに対し、SM-ETR TC周辺では偏西風ジェットの南北振幅は強まらない。</P>

収録刊行物

  • 気象集誌. 第2輯

    気象集誌. 第2輯 101 (5), 391-409, 2023

    公益社団法人 日本気象学会

参考文献 (28)*注記

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