プレハビリテーションと術前栄養療法による侵襲後の生体反応の修飾

抄録

【背景と目的】プレハビリテーションは術前に行われる運動プログラムであり、術後の早期回復を目的とする。我々は以 前、トレッドミル走によるプレハビリテーションが、高度外科侵襲である腸管虚血再灌流後の生存を向上させることを マウスの腸管虚血再灌流(gut ischemia reperfusion;gut I/R)傷害モデルで明らかにした。さらに、プレハビリテーショ ンは筋肉だけではなく、腸管を始めとした多臓器で生じる過剰な炎症反応を抑えることによってgut I/R 後の臓器傷害 を軽減し、生存が改善することが明らかになり、外科侵襲におけるプレハビリテーションの新たな意義を提唱するに 至った。今回その機序の解明を試み、プレハビリテーションの効果を増強する術前栄養療法を探索した。【対象と方法】 雄性C57BL/6J マウスに対してプレハビリテーションとしてトレッドミル走を行った。プレハビリテーション後のマウ ス腸管において、細胞保護作用を示すcytoprotective protein であるヒートショックプロテイン、抗アポトーシスタンパ ク、オートファジータンパク発現量を評価することで、プレハビリテーションによって腸管が侵襲に強くなる機序の解 明を試みた。さらに、ホエイタンパク強化食餌、ω3 系脂肪酸強化食餌、アルギニン強化食餌それぞれとプレハビリテー ションを組み合わせて介入したマウスに対してgut I/R を行い、再灌流後の生存、各組織における炎症性・抗炎症性サイ トカイン値、臓器傷害の程度、腸管cytoprotective protein の発現量などを評価した。【結果と考察】プレハビリテーショ ンは、腸管cytoprotective protein 発現の増強を通して侵襲に伴う過剰な炎症反応を抑制し、臓器傷害が軽減される可能 性があることが明らかになった。抗炎症作用を有するホエイタンパクやω3 系脂肪酸はプレハビリテーションの効果を 減弱させてしまうが、炎症惹起作用を有するアルギニンはその効果を増強する傾向にあることが明らかとなった。

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