預言者を模倣し、自力供犠を敢行する
-
- 澤井 充生
- 東京都立大学
書誌事項
- タイトル別名
-
- Imitate the Prophet, Sacrifice on Their Own
- The Practice of Folk Knowledge to Pursue "Orthodox Islam"
- 〈正しいイスラーム〉を追求するための民俗知の実践
抄録
<p>2012年に発足した習近平体制下中国では、ムスリム少数民族の宗教活動や民族文化に対する統制が強化されており、ムスリム少数民族は自分たちの生活世界においてさえも自律性を発揮しづらくなりつつある。本稿では、2014年に実施された犠牲祭の供犠を取り上げ、イスラーム改革主義者が供犠のありかたをとおして〈正しいイスラーム〉を追求する現象の意味について検討する。中国では清朝末期から中華民国期にかけてイスラーム改革主義運動が提唱され、中華人民共和国成立以降もイスラーム改革主義者は日々の礼拝から人生儀礼や年中行事にいたるまで自分たちが理想とする〈正しいイスラーム〉を追求する。犠牲祭の場合、イスラーム改革主義者は預言者ムハンマドのスンナ (慣行) を模倣し、自力供犠を選択・実施し、神からの報奨を数多く獲得しようと試みる。2010年代半ば頃以降、中国共産党・政府は供犠の実施場所に対する制限を徐々に強化したが、それにもかかわらず、イスラーム改革主義者は自分たちの生活圏のなかで自力供犠を敢行しようとしていた。本稿では、宗教統制が強化される社会主義国家においてイスラーム改革主義者が自力供犠の実践をとおして〈正しいイスラーム〉を追求することの意味を〈民俗知〉の実践と関連づけて考察する。</p>
収録刊行物
-
- 文化人類学
-
文化人類学 88 (1), 076-094, 2023-06-30
日本文化人類学会
- Tweet
詳細情報 詳細情報について
-
- CRID
- 1390016040232343680
-
- ISSN
- 24240516
- 13490648
-
- 本文言語コード
- ja
-
- データソース種別
-
- JaLC
-
- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可