令和5年度春季大会 高校生による研究発表最優秀賞を受賞して

  • 小泉 智弘
    明秀学園日立高等学校 宮田川研究会 指導教員(常勤講師)

抄録

<p>受賞発表題目:「よみがえったタンパン川~日立市宮田川の昭和・平成・令和における生物相の変遷から河川生物の保全について考察する~」</p><p>発表者:柴田 司,茅野うらら,長山颯汰,杉山 稜,鈴木 湧(明秀学園日立高等学校)</p><p>1. 研究発表に至る経緯</p><p> 本校は1925年9月5日に設立された長い歴史を誇る高校であり,令和5年現在においてはST・GS・S・Aの4コース制によって,それぞれが若者たちを育む取り組みを行なっている。こうした本校の教育活動の中には,生徒による自主的な探究活動があり,その一環として「宮田川研究会」が令和元年より設立された。</p><p> 宮田川は銅山からの排水による影響で,長らく青みがかった灰色をしていた時期があり,一時期は「タンパン川」と呼ばれたほど汚染の激しい川である(※タンパン:硫酸銅の別名)。今でこそ水は透明であるが,ほとんど生物はいないだろうと調査前は予想していた。しかし,我々の思っている以上に生物はたくましい存在であった。生徒に促されて現地調査を進めると,想定を遥かに超えた多様な生物の生息が明らかとなったのだ。また,生物相の調査と並行して歴史探究にも取り組み,生徒達とともに様々な側面から河川の研究へ勤しんだ。その過程で,本校に長らく勤められている教員から,平成8年に明秀学園で実施された宮田川の生物調査の記録の存在について知らされた。この記録と現在の調査データを照合した結果,現在の宮田川の生態系は回復傾向にあることを確信したのであった。</p><p> 以上の研究結果を総括し,河川生態系回復のモデルケースを示したいと考え,生徒と共に本学会での発表に臨む運びとなった。また,当時の研究会メンバーには水産学系の大学への進学を希望する生徒も在籍していた。彼らに学会発表の経験を積ませ,生物研究の厳しさと難しさ,そしておもしろさを共に分かち合うべく,本学会にて研究発表を実施した。</p>

収録刊行物

  • 日本水産学会誌

    日本水産学会誌 89 (5), 498-498, 2023-09-15

    公益社団法人 日本水産学会

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