外傷性横隔膜ヘルニア整復後に難治性周術期低血圧と高乳酸血症を示した猫の1例

  • 関 瀬利
    日本獣医生命科学大学獣医学部獣医保健看護学臨床部門
  • 安田 暁子
    日本獣医生命科学大学付属動物医療センター
  • 藤田 道郎
    日本獣医生命科学大学獣医学部獣医放射線学研究室

書誌事項

タイトル別名
  • Refractory Perioperative Hypotension and Hyperlactatemia after the Surgical Repair of a Traumatic Diaphragmatic Hernia in a Cat

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抄録

<p>症例は2歳の未避妊雌の雑種猫で, 外傷性横隔膜ヘルニアの診断と治療のために紹介来院した。胸部X線検査により胸腔内に消化管, 肝臓などの腹腔内臓器の脱出が疑われ, さらに心陰影も不明瞭であったことから外傷性横隔膜ヘルニアと診断し, 腹部正中切開によるヘルニア臓器の整復と横隔膜の閉鎖を実施した。ヘルニア臓器の整復後に腸管の蠕動運動と血管の脈動が低下し, 腸が蒼白状態となった。続いて, 低血圧と頻拍が認められた。昇圧処置として晶質液と膠質液の急速投与, ならびにドパミン, ノルエピネフリン, そして全血が投与されたが, 血圧の改善は認められなかった。 術後,血清乳酸値は徐々に上昇し, 代謝性アシドーシスが進行したため, コハク酸メチルプレドニゾロン, 重炭酸ナトリウムを投与し,昇圧目的にバソプレシンを投与した。さらに, 低血圧のみならず高カリウム血症, 低血糖症, そして高炭酸ガス血症も伴うようになり,カテコールアミン耐性の循環不全が持続して症例は術後約9時間で死亡した。外傷性横隔膜ヘルニア整復後には難治性の周術期低血圧, 高乳酸血症, 高カリウム血症, ならびに高炭酸ガス血症に注意して周術期管理を行う必要があろう。</p>

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