令和5年6月20~21日における奄美大島南部での豪雨災害(速報)

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タイトル別名
  • Heavy rain disaster in southern Amami-Oshima island_on June 20-21, 2023 (preliminary report)
  • Comparative study of flood damage in three low-elevation communities of Uken Village
  • 宇検村低標高3集落における浸水被害の比較考察

抄録

<p>【はじめに】2023年6月20~21日には,梅雨前線が奄美大島南部に停滞し,局地的に雷を伴う激しい大雨となった。人的被害はなかったものの,奄美市,大和村,宇検村,瀬戸内町で住家被害が報告されている(鹿児島県,6月26日)。被害があった4自治体は,龍郷町,喜界町等と共に「奄美群島総合防災研究会(2022年11月設立)」に参画している。</p><p>本発表では,「奄美群島総合防災研究会」のモデル地域でもあり,住家被害が最も多かった宇検村に注目し,降水量(雨量)の分析,2022年測量に基づく「浸水・被災の過程」,流域特性,満潮時間等を整理し, 7月6~9日現地調査結果等に基づき,宇検村3集落(名柄,部連,湯湾)での浸水被害の違いを検討する。</p><p>【降水量(雨量)】気象庁は,20日18時39分「顕著な大雨に関する気象情報」を発表し,21日には古仁屋で日降水量270.5ミリ(6月観測史上1位更新)を観測した。鹿児島県によると,6月20日0:00~21日23:50の48時間雨量は,大和村では,今里681㎜,大金久503㎜,大和ダム368㎜,宇検村では,宇検村592㎜,生勝475㎜,奄美市では,市447㎜,住用村402㎜,瀬戸内町では,節子525㎜,花天492㎜,深浦481㎜,瀬戸内町合庁429㎜であり,古仁屋(気象庁)429㎜より雨量が多い観測局が8局あった。今里,大金久,宇検村,生勝では,20日17~20時に48時間雨量の概ね半分が降り,花天,深浦,瀬戸内合庁では,21日5~9時に概ね半分弱から3分の1が降った。</p><p>【宇検村で防災事業】宇検村では,南西諸島「高島」の模試的な地形特性を有し,山と海に囲まれた標高約5 m以下の沖積低地に全人口約1,600人の9割程度が居住している。海沿い全13集落では,津波高潮等への対策として,溢流・越流等が予想される個所を測量し,住家の安全・危険性に係る浸水・被災の過程を考察(2022年4月),「危険潮位1.8 m」の設定(宇検村防災会議2022年5月31日),.高潮警報1.8 m,高潮注意報1.3 mへの改定(気象庁2023年1月26日)等進めてきた。</p><p>【3集落の地形特性】測量データに基づく「浸水・被災の過程」では,重要な局面として,床上浸水,河川や海からの直接の溢水・越流等が重視され,13集落で確認したところ,「名柄」での床上浸水1.7 ~ 1.9 m,河川溢流1.3 m,海溢流1.5 ~ 1.7 m,「部連」での床上浸水1.7 ~ 1.8 m,河川溢流1.7 m,海溢流4.6~4.8 m(防潮提上の県道),「湯湾」での床上浸水1.8 ~ 1.9 m,河川溢流1.4 ~ 1.6 m,海溢流1.9 mと分かった。名柄,部連,湯湾が他集落より低く,宇検村での「危険潮位」等設定の基準となっている。</p><p>3集落の河川特性として,名柄川では,流域面積(A)4.779㎢,幹線流路延長(E)3.569 ㎞,最高標高点434.7 m,流域形状比(A/E2)0.416であり,部連川では,順に2.260㎢,2.051 ㎞,345 m,0.537,湯湾川では,2.378 ㎢,3.569 ㎞,694.4 m,0.187である。流域面積は,名柄川が他2河川に比べて2倍程度である。流域形状比から,部連川が最も円に近く,名柄川が準じて,湯湾川が細長い形状であることが分かる。</p><p>【3集落での浸水害】宇検村では,半壊1件,床上浸水6件,床下浸水28件の住家被害が報告されており,低標高の3集落では,「名柄」では床上浸水5件および床下浸水6件,「部連」では床下浸水3件,「湯湾」では浸水0件である(宇検村,2023年6月23日)。「名柄」では,住家被害に係り,河川溢流3箇所,河川堤防決壊1箇所が発生した。被災者への聞き取り調査で,「名柄」では,「朝起きた時には浸水していなかったが,朝ドラが終わって(8:15),家の片づけの準備をして,始めようとした時(8:30頃)に,急に水位が増して,道路の反対側に止まっていた水が,道路を越えて(下流側にある)家の方に濁流となって押し寄せ,床下浸水した」等の証言を得た。21日朝8~9時頃に,満潮(名瀬検潮所21日8:16潮位86.0 cm,宇検村21日08:08潮位89.3 cm)との係りで氾濫が生じたことを複数から聞き取っている。一方,部連では,「山から水が来て,床下を通って抜けていった。夜20時頃と朝の2回床下浸水が起こった」「道路の排水溝に落ち葉等が詰まって流れなくなり,大雨の度にいつも浸水する道路の一部がまた浸水した」等,川からの溢流等による浸水はなかったが,「山からの水」等が排水せずに内水氾濫が生じたことに係る証言を複数から得た。</p><p>【おわりに】宇検村の他集落,大和村や瀬戸内町の被災者からの証言を得ている。さらに調査し,今後想定される大規模の災害への備えを強化したい。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390016128781673344
  • DOI
    10.14866/ajg.2023a.0_160
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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