保育所送迎から捉える父親の育児協力要因

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タイトル別名
  • Factors contributing to fathers' cooperation in child-rearing from the perspective of day nurseries pick-up and drop-off
  • A case study with “Tokyo Metropolitan Area ACT”
  • 東京都市圏ACTを用いた事例研究

抄録

<p>1.研究背景と目的</p><p> 近年,政府において男性育休取得の推進を政策として取り組んでいるものの,現状では父親の育児参加率は低いままである.その要因として現在の育児休業制度は会社を全面的に休まなければならず,そのために育休取得に対してハードルが高いことが指摘できる.一方で育休を取得する方法ではなく,父親自身が仕事量を調整して育児参加を行った報告や(巽 2018),水落(2006)が労働時間および通勤時間の短縮が育児参加率の向上につながっていることを指摘しているように,短時間勤務で代替できる可能性を模索すべきではないだろうか.</p><p> この点を模索する上で,父親の1日の生活行動を分析する必要があるが,たとえばオムツを変える等の家庭内の育児協力を把握するためにはアンケート調査等が必要となる.一方で保育所送迎については,パーソントリップ調査を用いることで送迎行動に関するトリップが把握可能である.ところで第6回全国家庭動向調査において,夫(父親)が週1~2回以上育児を遂行した夫(父親)の育児内容について,「遊び相手」は89.9%,「風呂入れ」は71.1%と家庭内での育児協力が高い一方で,「保育園の送迎」は32.6%と低い結果を示している.時間的ハードル等で送迎を行うことが難しいためでもあるが,一方で保育所送迎は他の育児協力よりも行われないが故に,夫が確実に育児参加を行っていると捉えることもできる.</p><p> 以上の点を踏まえて,本研究では子育てと仕事を両立させている父親の特徴を,送迎・通勤行動を含めた1日の生活行動の分析を通じて,時間の観点から明らかにする.特に保育所送迎を行っている父親と送迎せず直接自宅から勤務先まで行く父親の,2つのグループに分けて比較分析を行い,保育所の送迎が可能な特徴について考察する.</p><p>2.研究方法</p><p> 本研究では国土交通省より提供された「東京都市圏ACT」データを用いて, 1日の生活行動について比較検証を行う.「東京都市圏ACT」はパーソントリップをもとに作られたデータであり,送迎を捉える項目がある.今回の分析では調査対象者に関しては10歳未満の子どものいる者を対象とし,時間制約については,午前10時までに勤務先に到着し,かつ勤務先から出発時間が午後4時以降の人を対象とした.保育所送迎者はさらに午前6時30分から午前9時30分までに保育所に到着した者に対象を絞り,可能な限りの利用者と想定される人の抽出を行った.また今回の保育所送迎者は自宅→送迎先→勤務先→自宅の流れで生活行動をしている者に絞って分析を行う.</p><p>3. 通勤時間・勤務時間・勤務先関係の比較</p><p> 今回の分析では1日の生活行動の通勤時間,勤務時間の平均値で比較と,都心5区(ここでは千代田区・中央区・港区・新宿区・渋谷区を対象)への通勤者比率の比較を行う.保育送迎者の通勤時間は自宅から送迎先を経由して勤務先までの所要時間とした.</p><p> 表1は都心5区への通勤比率と各時間の平均値を属性別に示したものである.この中で大きく差が見られたのが通勤時間である.保育送迎者は20分程余計にかかっており,通勤時間が短いが故に送迎時間を確保しているというわけではなく,通勤のみの者の通勤時間に送迎時間が加わった傾向であることが想定される結果となった.一方で地域事情によって結果が変容することも踏まえて,今後は地域別の加味した比較,これと併せて帰宅時も保育送迎を行う者ものも加えて,保育送迎から捉える育児協力の実態を検証することを今後の課題としたい.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390016128781676928
  • DOI
    10.14866/ajg.2023a.0_154
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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