義歯調整による咀嚼機能回復が 終末期と判断された患者の回復をもたらした1 例

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  • A case of restoration of masticatory function by occlusal adjustment of dentures resultied in recovery of the general condition of teminal patient

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抄録

<p>本症例は,アルブミンの補充が効果を示さない肝硬変腹水を認め終末期と判断された86 歳の女性患者が,咀嚼機能の回復をきっかけに全身状態の改善をみた注目すべき症例である.当院(慢性期病院)入院までの経過は,市内A 整形外科病院に圧迫骨折治療目的で入院中,食欲低下血圧低下のため心不全疑いにて市内B 急性期病院へ救急搬送され,CT 検査にて肝硬変と大量の腹水,両側肺にも少量の胸水を認めた.A 整形外科病院入院中に食欲不振,慢性下痢,低蛋白血症,胸水,下腿浮腫,血小板減少を認めた.症状悪化に伴い転院したB 急性期病院で,補液,アルブミン製剤投与,腹水穿刺を行うが,食欲不振は継続した.食事量低下に伴う衰弱と廃用の進行が予想されたが,本人・家族ともに積極的治療や侵襲的検査は望まず,継続療養目的で慢性期病院に転院した.転院後に義歯で食べられないと訴えたため,義歯を咬合器にリマウントして調整し咀嚼機能を改善するとともに,多職種連携により経口摂取を促した.その結果,食事摂取量が回復・安定した.食事摂取量の回復と利尿剤による腹水の排出,肝機能の改善に伴い全身状態の安定とFIM 向上が認められ,約10 カ月後に施設退院となった.咀嚼機能の回復は,QOL に重要な役割をもつので,終末期と判断された患者でも咀嚼機能の回復に努めるべきであることが,強く示唆された.</p>

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