海水のpHがサンゴ骨格のSr-UとLi/Mgに与える影響

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  • Coral Sr-U and Li/Mg thermometers under acidified seawater and pH up-regulation

抄録

<p>海洋生物の硬組織にはその生物が経験した環境が記録される.ハマサンゴなど造礁サンゴの骨格には年輪が形成され,年輪の観察からサンゴの成長の履歴(年齢や成長速度)を明らかにできる.また,炭酸カルシウムを主成分とする骨格の同位体組成や微量元素濃度はサンゴが経験した水温や塩分などを反映する.サンゴ骨格がもつこれらの特徴を利用し,熱帯-亜熱帯域の表層における環境の変化を過去にさかのぼって解明する研究が行われている.サンゴの骨格に含まれるストロンチウムとカルシウムのモル比(Sr/Ca)は表層水温を反映する指標として利用されてきた.しかし,Sr/Caは水温以外にも成長速度などの影響を受ける場合があり,同じ種の造礁サンゴであっても群体や海域ごとに骨格のSr/Caと水温の関係が異なる事例が報告された.また,海洋酸性化はサンゴの骨格が形成される母液の化学組成や骨格の微量元素濃度にも影響し,その影響はサンゴの種ごとに異なる可能性が報告された.そのため,経験した水温が同じでも群体や種が異なるとサンゴの骨格に記録されるSr/Caに差が生じる場合が想定される.したがって,複数の群体または種のサンゴ骨格を利用し,様々な海域や年代の水温を高い精度で推定し比較するためにはSr/Ca以外の新しい指標が必要となる.水温以外の影響を受けにくい指標として,ストロンチウムとウラン(Sr-U)やリチウムとマグネシウム(Li/Mg)など2つの微量元素を組み合わせた指標が提案された. Li/Mgは造礁サンゴだけでなく共生藻を持たないサンゴにも応用が可能で,深海の水温も推定できると報告されている.Sr-UとLi/Mgを利用して正確に水温を推定するためには,海洋酸性化や海洋の水深によるpHの変化がSr-UとLi/Mgに与える影響を明らかにすることが重要といえる.本研究ではpHが異なる海水で飼育された造礁サンゴ(Acropora digitifera)のSr-UとLi/Mgから推定した水温と飼育海水の水温を比較した.また,骨格が形成される母液のpHと骨格のSr-UおよびLi/Mgを比較し,pHが水温の指標に与える影響を定量的に明らかにした.その結果,Sr-U はLi/MgよりもpHの影響を受けにくく,より正確な指標として利用できることがわかった.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390016880929374336
  • DOI
    10.14862/geochemproc.70.0_93
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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