身体症状症および関連症群に対し,漢方治療のnarrativeな態度を活かした桂枝湯合麻黄附子細辛湯の使用が,一般心理療法(非薬物療法)かつ薬物療法として奏効した7症例の検討

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  • A study of 7 cases of in which keishitogomaobushisaishinto was effective as a general psychotherapy (non-drug therapy) and drug therapy for patients with somatic symptom and related disorders by taking advantage of the narrative attitude of kampo medicine

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抄録

<p>身体症状症および関連症群は,「症状が多彩で,経過が長く,背景因子が複雑に絡む」という特徴を有する.患者が訴える症状に対して西洋医学的検査を繰り返し施行しても結果が陰性であると,「医学的に説明がつかない」として医療者を混乱させる.それらは「不定愁訴」あるいは,患者が女性の場合には躊躇なく「更年期障害」などと診断され,産婦人科を紹介受診する症例は日常診療においてしばしば経験する.今回,そのようにして当科を受診した40~50歳代女性の身体症状症および関連症群に対し漢方治療を行った.一般に身体症状症および関連症群に対する薬物療法は治療の中心にはならないが,漢方治療は四診を行い,患者に寄り添い支持することを基本理念としているため,一般心理療法に通じる非薬物療法も同時に実践できる.漢方医学において陰(血・水)と陽(気)の調和がヒトの恒常性を保つのに不可欠とされるが,ストレス社会ではこれらが不調和となった結果,心身に支障を来す.原典の『金匱要略』は,これを「気分」と記載している.古典医学的に定義された気分が,「快・不快など,ある程度持続する心身の状態」を指す現代語に通ずるところは興味深い.気分の改善薬に桂姜棗草黄辛附湯があり,気を巡らすことにより血・水を巡らせ,心身の状態を整える.エキス剤では,桂枝湯と麻黄附子細辛湯を併用し桂枝湯合麻黄附子細辛湯として代用することが多い.今回,他院で見放された慢性疼痛や20年もの間悩まされていた冷えが,桂枝湯合麻黄附子細辛湯を4~6週内服して改善した.あらゆる検査で異常がないことより「気のせい」などと軽視されがちな身体症状症および関連症群の諸症状は,漢方医学的にはまさに「気」のせいで起きており,それが整う方向へ導く治療法として桂枝湯合麻黄附子細辛湯が奏効した.</p>

収録刊行物

  • 女性心身医学

    女性心身医学 28 (2), 222-231, 2023

    一般社団法人 日本女性心身医学会

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