尿一般検査における無症候性細菌尿の鑑別

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タイトル別名
  • Differential diagnosis of asymptomatic bacteriuria using conventional urinalysis results

抄録

<p>【緒言】無症候性細菌尿を呈する患者に抗菌薬を使用することは患者に不利益なだけでなく,耐性菌の発生にもつながる.しかし,高齢者,とくにカテーテル挿入患者では発熱以外の症状を認めない尿路感染症も多く,他の原因による発熱に合併する無症候性細菌尿と真の尿路感染症を鑑別するのは困難である.そこで今回,尿一般検査のデータをもとに無症候性細菌尿の鑑別について検討した.</p><p>【材料】2022 年7 月から9 月までに,当院尿一般検査室に提出された外来患者尿検体で膿尿(尿中白血球5 個/HPF 以上)かつ細菌尿(104 CFU/mL 以上)を示した110 検体を用いた.</p><p>【方法】1.尿一般検査:オーションハイブリッドAU-4050(アークレイマーケティング株式会社)を用い,尿定性検査と尿沈渣検査を実施した.2.微生物学的検査:尿検体10 µL(白金耳量)をBTB 乳糖寒天培地および血液寒天培に塗抹し,37℃で18–24 時間好気培養した.3.無症候性細菌尿を鑑別する予測式の算出:アウトカムを尿培養検査における有意な菌発育の有無,年齢,性別,尿中白血球数,尿中細菌数,尿中扁平上皮細胞数を共変量としてロジスティック回帰により予測値(傾向スコア)を算出した.</p><p>【結果】予測値をもとにROC 曲線を描出したところAUC 0.963 と良好な結果であった.計算によりカットオフ値 0.381(感度94.4% 特異度87.5%)を規定した。その結果,無症候性細菌尿が予測された58 検体のうち51 検体は尿 培養検査陰性であった.一方,尿路感染症が予測された52 検体のうち49 検体が尿培養検査陽性であった.</p><p>【考察】尿一般検査における無症候性細菌尿の鑑別はある程度可能であった.病歴・身体所見・血液検査所見・画像所見と,今回求めたカットオフ値を用いることによって,精度の向上が期待できると考える.</p>

収録刊行物

  • Tenri Medical Bulletin

    Tenri Medical Bulletin 26 (2), 119-119, 2023-12-25

    公益財団法人 天理よろづ相談所 医学研究所

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