水の安全保障化と国際法政策の動向

書誌事項

タイトル別名
  • Securitization of Water and Trends in International Legal Policy

抄録

今世紀に入り、「水の安全保障」の概念が注目を集めている。しかし、その定義が国際的に確立しているわけではない。むしろ、国家は独自の戦略的な狙いにより水問題を「安全保障化」させてきた。水を介した脅威を除去ないし低減させる対応策もまた、「平和と協力の道具としての水」や「持続可能な発展のための水」の理念の下で各国から示されている。国際法政策の動向に目を移すと、水の安全保障化に基づき例外的措置を正当化しようとする国家の法的主張が注意深く退けられており、他方で、協力を通じた越境水域の管理、武力紛争時の水施設と環境の保護、水・衛生・環境に対する人権の保障、生態系の保全などを推進する国際法制度を強化する傾向が見られる。水の安全保障を確保するグローバル・ガバナンスにおいて、安全保障理事会が担う役割への期待は高まっているが、武力紛争に関連する事態を超えて役割を拡大する際には、慎重な体制整備が必要となる。

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