基岩地下水の考慮で流出・保水性・透水性のモデル推定はどう変わるのか?

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  • How does the consideration of bedrock groundwater change model estimation of runoff, water retention, and permeability?

抄録

<p>近年、山地森林流域での流出形成に基岩地下水が重要な影響を及ぼすことが明らかになってきた。気候変動や森林環境の変化を反映したモデル計算を行うためには物理的な分布型モデルが有効であるが、従来の降雨流出モデルでは地下水を土壌のみで扱うか土壌・基岩を一体として扱うかであり、土壌と基岩を明示的に分けそれぞれの水移動を物理的に扱うモデルはほとんど無い。本研究は、分布型モデルで基岩地下水を考慮することで流出の再現精度や流域の保水性・透水性の推定、およびそれらの不確実性が流域スケールでどう変わるのか明らかにすることを目的とした。そのため、まず土壌と基岩を明示的に扱う物理的な分布型モデル BLock Aggregation of Darcy’s law Elements model (BLADE) を開発した。BLADEでは、流域をメッシュ分割して土壌・基岩柱に分け、Darcy則や拡張Dupuit-Forchheimer近似に基づき隣接するブロック間での水移動(土壌の飽和・不飽和側方流、土壌から基岩への浸透、基岩から土壌への湧出、基岩の飽和側方流)を計算する。そしてBLADEの特性を活かし、土壌・基岩の両方を考慮するBLADEと土壌のみを考慮するBLADEを神奈川県丹沢山地大洞沢流域(面積:49.4 ha、土壌:褐色森林土、基岩:角礫凝灰岩、期間:2011~2017年)に適用した。乱数発生させた同一のパラメータセットを両モデルに入力してモデル計算を行ない、低流量時の再現性を重視して評価するため流量の逆数に対するNash-Sutcliffe指標(NSEi)を尤度としてメトロポリス法を適用し、不確実性込みの流量を求めた。その結果、基岩考慮ありでNSEiは平均値0.62、最大値0.82、基岩考慮なしでNSEiは平均値0.48、最大値0.66となった。等分散を仮定せず平均値に対してt検定を行なったところ帰無仮説は有意水準5%で棄却され、基岩を考慮した方の再現精度が高かった。さらに、計算流量の95%範囲に観測流量が収まるのは基岩考慮ありの方が多かった。また、ベイズ推論によって推定されたパラメータに基づいて流域の保水性・透水性の推定を行なったところ基岩考慮の有無で推定結果に差が見られ、特に基岩を考慮しない場合の方で透水性が低く推定され、これは土壌のみで低流量を再現するために透水性が低く推定されるからと考えられた。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390017193115819904
  • DOI
    10.11520/jshwr.36.0_394
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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