微弱電流刺激がマクロファージ貪食能に及ぼす影響の解析

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<p>【目的】</p><p>がん免疫療法は近年確立された悪性腫瘍に対する主要な治療法である。がん免疫の起点は、マクロファージ(Mφ)によるがん細胞の貪食であり、Mφの機能を制御することで強力な抗腫瘍効果を示すことが明らかになっている。一方、当研究室では非侵襲的な微弱電流刺激(MCS)が生体に及ぼす影響について検討を行っており、時計遺伝子Per1の発現を誘導し、体内時計を調整する方法を構築している1。そこで、本研究では、MCSが免疫系の中心であるMφに及ぼす影響について、薬理学的解析手法を用いて検討を行った。</p><p>【方法】</p><p>貪食能の評価にはRAW264.7、THP-1、マウスから採取した腹腔Mφを用いた。各分子の発現はリアルタイムPCRまたはウエスタンブロッティングにより測定した。</p><p>【結果・考察】</p><p>まず、MCS処置をしたMφとマウス乳がん細胞株4T1を共培養し、貪食能を評価した。その結果、MCSによりがん細胞に対するMφの貪食能が上昇することが明らかとなった。次に、MφにMCSを行った際の細胞の変化を、マウスMφ細胞株RAW264.7を用いて観察した結果、MCSはMφの分化や免疫チェックポイントには影響せず、アクチン重合を介して貪食能そのものを上昇させることが示唆された。そこで、この詳細な機構についてNGSを起点に解析した結果、MCSが概日時計機構を変容させることでMCS関連キナーゼ(MRK)の発現リズムを低下させ、貪食能上昇をもたらす一連の機構が明らかとなった。また、腹膜播種モデルマウスに対してMCSを実施した結果、MCSが腫瘍へのMφ浸潤を増加させること、およびMφの腫瘍貪食能を上昇させることにより抗腫瘍効果を発揮することが明らかとなった。最後に、MCS処置したMφと種々のがん細胞を共培養し、その貪食能を評価した。その結果、ヒト・マウス双方ともに、乳がん細胞以外においても、多くのがん細胞に対する貪食がMCSにより上昇することが明らかとなった。</p><p>【結論】</p><p>本研究の結果は、MCSがMφの貪食促進を介して抗腫瘍効果を示すことを明らかにしており、がん治療へ応用できる可能性を示唆している。</p><p>1)Matsunaga N, Yoshida Y, et al., BBRC. 2019.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390017267762534656
  • DOI
    10.50993/jsptsuppl.44.0_1-c-o03-1
  • ISSN
    24365580
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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