新規炎症関連タンパク質NPIPの機能に着目したマクロファージ分化機構の解析

DOI
  • 石丸 和佳
    九州大学大学院薬学研究院薬剤学分野
  • 鶴田 朗人
    九州大学大学院薬学研究院薬剤学分野 九州大学大学院薬学研究院グローカルヘルスケア分野
  • 吉田 優哉
    九州大学大学院薬学研究院薬物動態学分野
  • 松永 直哉
    九州大学大学院薬学研究院薬物動態学分野
  • 小柳 悟
    九州大学大学院薬学研究院薬剤学分野 九州大学大学院薬学研究院グローカルヘルスケア分野
  • 大戸 茂弘
    九州大学大学院薬学研究院薬剤学分野

抄録

<p>【目的】肝臓がん患者の10年生存率は約20%と非常に予後が悪く、再発率の高さが問題となっている。肝臓がんの再発率の高さは、その病源にある慢性肝炎や肝硬変の治癒が困難なことに起因しており、慢性肝炎の進行を抑制する手法の開発が求められている。肝炎の進行において重要な役割を担うマクロファージ(MΦ)は、大きく分けて2つのサブタイプ(炎症促進的なM1-MΦと炎症抑制的なM2-MΦ)に分化するが、その分化機構や肝炎との関連には不明点が多い。これまでに当研究室では、新たに同定した抗炎症化合物が、新規炎症関連タンパク質NPIP:Novel-proinflammatory protein(仮称)の機能を抑制すること、時計遺伝子であるBMAL1がNPIPの核内移行を介して炎症反応を制御していることを見出している。しかし、核内NPIPの機能がMΦの分化や肝炎の進行に及ぼす影響については不明である。そこで本研究では、慢性肝炎の治療法構築を目的として、MΦの分化におけるNPIPの機能について解析を行った。</p><p>【方法】NPIPノックアウト(KO)のMΦ様細胞株(RAW264.7)は、CRISPR/Cas9を用いて作製した。MΦ選択的BMAL1 KOマウス(Bmal1cKOマウス)は、LysM-CreマウスとBmal1 fl/flマウスを掛け合わせて作製した。慢性肝炎モデルマウスはDiethylnitrosamine (DEN) 80 mg/L含有水を13週間飲水投与することで作製した。MΦ分化の解析にはフローサイトメーターを用いた。</p><p>【結果・考察】 NPIP KOのRAW264.7細胞を用いてMΦの分化について解析した結果、NPIP KO細胞ではM1-MΦへの分化抑制が観察された。また、Bmal1 cKOマウスとBmal1 fl/flマウスから骨髄由来MΦを調製して解析した結果、Bmal1 cKOマウスでは核内NPIP量の減少およびM1-MΦへの分化抑制が認められたとともに、NPIPの機能を抑制する抗炎症化合物の効果も消失することが明らかになった。このことからBMAL1によるNPIPの核内移行がM1-MΦの分化に関与していることが示唆された。さらに、DEN誘発慢性肝炎モデルマウスを用いてMΦのBMAL1の機能解析を行った結果、Bmal1 cKOマウスでは肝臓がんマーカーの発現量が低下した。以上より、BMAL1-NPIP経路を介して分化したM1-MΦは、炎症を亢進し、慢性肝炎から肝臓がんの進行に寄与していることが示唆された。</p><p>【結論】MΦにおける核内NPIPは、慢性肝炎の新規治療標的になる可能性があると考えられた。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390017267762706304
  • DOI
    10.50993/jsptsuppl.44.0_3-c-o16-3
  • ISSN
    24365580
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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