研究者・支援者の共通理解によるQuality by Designの実装に向けたリスク管理表の提案

DOI

抄録

<p>【目的】ICH E8R1「臨床試験の一般指針」では、Quality by Design(QbD)の方法として、質に関する重要な要因(以下CTQ要因)に焦点を当てることと、リスクに応じたアプローチによるリスク管理とが含まれる。しかし、CTQ要因はまだ現場に浸透しておらず、リスク評価やリスク管理といった取り組みの多くは支援者を中心として実施されている場合が多く、研究者には十分に認識されていない。そこで、QbDにおける研究者と支援者との対話や認識の共通化にも活用可能なリスク管理表について検討を行った。</p><p>【方法】R4年度AMED研究開発推進ネットワーク事業(松山班)の活動において、公表されている既存のリスク評価・管理のためのツールに基づき、リスク管理表の原版を作成した。また、QbDとのつながりを意識できるよう、CTQ要因や品質許容限界(Quality Tolerance Limits;QTL)の項目を設定した。また、研究者と支援者が共にリスクに関する全体像を把握できるよう、必要な情報を1枚にまとめられるようなデザインとした。</p><p>【結果・考察】誰でも使用することが可能にするために、汎用性の高いMicrosoft Excelにて、リスク事象毎に当該リスクの評価、原因と対策、CTQへの該当性、管理者および対応者、モニタリング方法、QTLならびに対策実施のトリガー・ポイントを記載できるシートとして新たなリスク評価法を作成・提案した。また、各項目に関する参考説明を記載したほか、別シートにて記載例を作成した。松山班では、QbDによる計画立案に向け、研究の全体像を可視化し、把握するための対話を支援するツールとしてQbDコミュニケーションシート(A3シート)を提案しており、本リスク管理表はA3シートを用いた対話の中で研究者と支援者とが一緒になって作成することを想定している。QbDにおいては、リスク評価の結果を適切に研究デザインやプロセスに反映するため、モニタリング担当者やデータマネジメント担当者のみならず、研究者やスタディマネジャーなども適切にリスク評価に関与することが必須であり、本リスク管理表はそのための支援を可能にすることが期待される。</p><p>【結論】QbDにおけるリスク評価は、研究計画立案時のみならず、研究実施中の適切なリスク管理や、必要に応じたリスクの再評価や管理方法を見直すことが重要である。今後は本リスク評価表を活用した研究支援を実施し、QbDへの貢献度の評価や評価表の見直しを行っていく予定である。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390017267762739968
  • DOI
    10.50993/jsptsuppl.44.0_3-c-o17-5
  • ISSN
    24365580
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ