大規模医療情報データベースを用いた日本における降圧薬の有害事象発現状況の調査

DOI
  • 細美 友里瑛
    大阪大学薬学部臨床薬理学分野
  • 前田 真貴子
    大阪大学薬学部臨床薬理学分野 大阪大学医学系研究科分子医薬学講座 大阪大学医学部附属病院未来医療開発部
  • 廣部 祥子
    大阪大学薬学部臨床薬理学分野 大阪大学医学系研究科分子医薬学講座 大阪大学医学部附属病院薬剤部
  • 前田 真一郎
    大阪大学薬学部臨床薬理学分野 大阪大学医学部附属病院薬剤部
  • 神出 計
    大阪大学医学系研究科保健学専攻統合ヘルスプロモーション科学講座
  • 藤尾 慈
    大阪大学薬学部臨床薬理学分野 大阪大学薬学部臨床薬効解析学分野

抄録

<p>【目的】高血圧治療において、ACEIとARBは第一選択薬として推奨されているが2剤の処方傾向や有害事象(AR)報告の比較は殆どされていない。本研究では、大規模医療情報データベースを用いて日本の両薬剤の処方傾向を基にAR発現状況を調査することとした。【方法】厚生労働省により公開されたNDBオープンデータを用いてACEI、ARB、Ca拮抗薬、利尿薬の2015年から2020年の処方錠数を調査した。AR発現状況はFAERS及びJADERを用いて、ACEI又はARBを服用し、2013年から2022年までに日本で起こった有害事象を対象として、各薬剤のAR発現の有無で分けた2x2分割表により報告オッズ比(ROR, 95%CI>1でシグナルあり)のシグナル検出を行った。調査項目は、両薬剤の添付文書に副作用として記載されている血管浮腫等の14項目と主要心血管イベント(脳卒中、心筋梗塞、心不全、心血管死)とした。報告集計及び解析にはRを用いた。【結果・考察】NDBで得られた処方数(約480億錠) の内、ACEIの処方割合は最も少なかった(%;ACEI 2.4, ARB 28.9, Ca拮抗薬 53.8, 利尿薬 14.9)。AR報告件数は、FAERS(F)ではACEIが5,396名(22,028件)、ARBが27,312名(102,735件)であるが、上記処方数に対する報告割合比を算出するとACEIはARBの約2.7倍であることが推定された。JADER(J)でも同様であった(ACEI、7,009名、12,981件;ARB、38,336名、73,207件;2.3倍)。14項目の内、ACEIは咳 (F, ROR 1.69, 95% CI, 1.33-2.15; J, 1.67, 1.03-2.72)、血管浮腫 (1.77, 1.05-3.01; 5.26, 4.25-6.49 )、低血圧 (1.41, 1.15-1.73; 1.53, 1.20-1.96)、貧血 (Jのみ, 1.38, 1.18-1.62)、血小板減少症 (J, 1.39, 1.05-1.83)、高K血症 (J, 1.27, 1.07-1.49)、心血管イベント(1.94, 1.79-2.10; 1.67, 1.51-1.84)で、ARBは高K血症 (F, 1.38, 1.11-1.73)、下痢 (J, 1.69, 1.32-2.16)、頭痛 (J, 1.98, 1.12-3.49)でシグナル検出が認められた。特に高齢者(≧70歳)ではACEIによる血管浮腫で高いシグナルが認められた (2.90, 1.33-6.33; 8.59, 6.19-11.92)。【結論】本研究より、ACEIにおいて咳以外に血管浮腫、低血圧等のAR発現率がARBよりも高く、ARBでは下痢、頭痛の発現率が高いことが示唆され、他の先行研究報告と同様の結果だった。FAERS、JADER等の副作用データベースは母集団の情報がないため、正確な分析は困難だとされている。そのため、今後更なる検討が必要である。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390017267762743168
  • DOI
    10.50993/jsptsuppl.44.0_3-c-p-a3
  • ISSN
    24365580
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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