大麻由来医薬品による薬剤抵抗性てんかんに対する治療の課題と展望

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抄録

<p>大麻草由来の高純度カンナビジオール(CBD)は、小児期発症の薬剤抵抗性てんかんの治療薬として、日本への導入も検討されている。これまでの基礎研究により、CBDの抗けいれん作用がGPR55、TRPV1、ENT-1などの標的分子に対する作用を介してもたらされることが知られている。一方で、CBDでは多幸感を惹起するカンナビノイド受容体1(CB1)およびそのアイソフォームCB2に対する作用は認められていない。動物実験のデータからはCBDがヒトでテトラヒドロカンナビノール(THC)様の多幸感惹起作用をもたらす可能性は低いことが示唆されている。CBDは、少なくとも113あるカンナビノイド(大麻草に含まれる化学物質の総称)のひとつであり、THC、CBN、CBDはカンナビノイドの三大主成分として知られている。大麻には抗てんかん作用や鎮静作用があることが古くから知られていた。多くの試験からCBDは良好な安全性の特徴、忍容性があり、THCのような典型的な効果(麻薬・精神作用)はなく、乱用、依存、身体依存、耐性の可能性は低い。ただし、詳細な抗てんかん作用メカニズムは不明である。他国での承認状況としては、アメリカで1歳以上のレノックス・ガストー症候群(LGS)、ドラべ症候群(DS)、結節性硬化症(TSC)に伴うてんかん発作の治療薬として、「エピディオレックス(CBD)」内用液が承認されている。欧州では2歳以上のLGS又はDSに伴うてんかん発作のクロバザム(抗てんかん薬)との併用補助療法並びにTSCに伴うてんかん発作の併用補助療法として承認されている。オーストラリアでは2歳以上のLGS又はDSに伴うてんかん発作の補助療法として承認されている。今回のわが国での治験は、日本人小児および成人患者を対象にLGS、DSまたはTSCと関連する難治な発作に対する併用療法として、CBD経口液剤の安全性および有効性を検討する非盲検試験として行われる。本治験は大麻取締法の規制下で実施されている。厚生労働省は、CBD経口液剤は、麻薬及び向精神薬管理法の第3章 (第34条) に準拠して施錠された施設に保管する必要があると規定している。治験で得られたデータを基に、CBD経口液剤が1日でも早く国民に届けられることを願っている。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390017267762750208
  • DOI
    10.50993/jsptsuppl.44.0_2-c-s22-1
  • ISSN
    24365580
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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