SLE 治療の最前線

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  • 藤尾 圭志
    東京大学大学院医学系研究科内科学専攻 アレルギー・リウマチ学

抄録

<p>全身性エリテマトーデス(SLE)は代表的な全身性自己免疫疾患である。治療の基本はグルココルチコイドと免疫抑制剤の併用であるが、最近分子標的薬が使えるようになり、その治療戦略は大きく変わってきている。1950年代にはグルココルチコイドの使用は不十分で、SLEの3年生存率は60%程度であった。1960年代から高用量グルココルチコイドが使用されるようになり、3年生存率は80%程度まで改善した。1990年代にはシクロホスファミドが使われるようになり、2000年代にはSLEの10年生存率は95%程度まで改善している。しかしながらより長期の生命予後は不十分であり、近年のレジストリ研究でも死亡年齢の中央値は60歳代である。疫学研究により、グルココルチコイドの動脈硬化、骨粗鬆症、耐糖能異常などの作用による臓器障害の蓄積が、SLEの長期予後を悪化させていることが分かってきた。そこでSLEの長期予後改善のための目標を持った(Treat to target: T2T)治療戦略が提案されている。この治療戦略はまずグルココルチコイドと免疫抑制剤のコンビネーションにより寛解または低疾患活動性を達成し、その後免疫抑制剤や分子標的薬を組み合わせることで、グルココルチコイドの使用量を最低限にするというものである。これまでのガイドラインではグルココルチコイドの使用量はPSL換算7.5mg/日以下が目標だったが、2023年のヨーロッパリウマチ学会(EULAR)のリコメンデーションではPSL換算5mg/日以下が目標とされ、この目標達成のために積極的に抗BAFF抗体ベリムマブや、抗I型IFN受容体抗体アニフロルマブを使用することが提案された。またこのような薬物療法以外に、少数例の難治性SLEにおいてCD19 CAR-T細胞療法が高い有効性を発揮し、抗核抗体を陰性化させ1年半以上のドラッグフリー寛解を達成できることが報告された。このことはB細胞系のリセットによりSLEの寛解が達成できる可能性を示しており、今後の治療戦略にも大きな影響を及ぼすと考えられる。本講演ではこのようにダイナミックに変化しているSLEの治療を概説し、免疫介在性疾患の層別化医療を考えてみたい。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390017267762753408
  • DOI
    10.50993/jsptsuppl.44.0_2-c-s32-2
  • ISSN
    24365580
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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