高位脛骨骨切り術と自家培養軟骨移植術を施行した一症例

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タイトル別名
  • O-142 骨関節・脊髄⑤

抄録

<p>【はじめに】 高位脛骨骨切り術(HTO)は、変形性膝関節症の治療の一つとして多くの手術実績があり、それに対する報告も数多くみられる。また、軟骨欠損に対する再生医療として、自身の軟骨を採取し、それを体外で培養し、欠損部に戻す自家培養軟骨移植術が近年注目されている。自家培養軟骨移植術はその生着率が術後経過を大きく左右するが、HTOにより荷重部位を矯正することで、生着率の向上が期待できる。我々が狩猟しえた限りでは、これらを同時に施行した患者に対するリハビリテーションの報告はなく、今回、HTOと自家培養軟骨移植術を併用した患者に対する理学療法の経験について報告する。</p><p>【症例紹介】 症例は50歳代の女性で、既往歴として今回の術側の半月板切除術を⃝年前に施行された。その後、疼痛の増悪がみられたため2022年⃝月に高位脛骨骨切り術と自家培養軟骨移植術を施行した。術後のプロトコルは以下の通りである。術直後~3週:術側膝ROMは伸展0°~屈曲60°(リハ時以外は伸展位固定)、荷重は15 ㎏まで。術後3週~術後6週:術側膝ROMは伸展0°~屈曲90°、荷重は15 ㎏まで。術後6週~12週:術側膝ROM制限なし、荷重は30 ㎏まで、術後12週~:運動制限なし、全荷重可、中等度のエルゴメーター開始。</p><p> 術部の経過は概ね良好で、プロトコルに準じて疼痛自制内でROMや筋力の改善を認めたが、基本動作や歩行など、特に立位での動作の不安定感が著明であった。術後12週で全荷重になった際も、術側下肢への荷重がかけられず、静止立位すら安定しない状態であった。その要因として、足部・足趾の筋力低下(底屈MMT:3/2+)による床把持困難を契機とした前足部への荷重困難と考えた。本症例は術前より、歩行が可能であったにも関わらず車椅子を使用するなど、疼痛や転倒への不安感が非常に強く、骨盤が後傾した後方重心姿勢をとっており、歩容はすり足であった。そのため、下腿三頭筋や足趾屈筋の不使用による筋力低下を引き起こし、さらに不安定性が高まるという悪循環を生じていたと推測される。そこで、まず平行棒内にて不安感を軽減した状態での立位保持、前足部荷重を促していくことから開始した。開始当初は上肢支持を用いながら可能な範囲で前方への重心移動を行い、改善に応じて上肢支持量を漸減し、リーチ動作や上肢課題を追加した。その結果、術後13週時点では足底屈MMT(3/3)で上肢支持なしでの安定した立位保持が可能となり、術後14週時点で病棟内T-cane歩行自立、術後16週時点で足底屈MMT(4/3)で院内T-cane歩行自立となり、術後18週で自宅退院となった。</p><p>【考察】 本症例は、手術部の経過は概ね問題ないにも関わらず、歩行やADL拡大が遷延した。その要因として、前述の通り、不安感からの後方重心に伴う足部機能低下とそれによる安定性低下の悪循環であると考え、不安感を軽減した状態からの立位保持、足部機能改善を図り、良好な結果を得ることができた。元来、本症例は不安感の強い性格であることに加え、症例数の少ない新しい手術を行ったことでより不安感を助長し、身体機能に現れたと思われる。当術式は通常のHTOと比較し免荷期間が長いことで、荷重が許可されてもスムースな導入が困難な一面があると思われるが、手術部位の状態のみならず、精神面や全身の機能を総合的に評価し、治療に反映させることが重要であることを再確認する良い機会となった。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390017289897105152
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2023.0_142
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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