荷重による舟状骨降下量が降段動作時の下段下肢の衝撃吸収に及ぼす影響

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タイトル別名
  • O-143 骨関節・脊髄⑤

抄録

<p>【目的】 降段動作は日常生活で多用される動作であり、歩行よりも足底への衝撃が大きい動作であるが内側縦アーチと降段動作の衝撃吸収能については研究されていない。本研究では健常者を対象に内側縦アーチの一指標であるNavicular Drop test(以下、NDT)が降段動作時の下段下肢足底への衝撃吸収能にどのように影響しているのかを研究した。</p><p>【方法】 被検者は健常者10名(男性5名女性5名。年齢32.1±6.3)とした。課題動作は18 ㎝台からの降段動作とした。開始肢位は静止立位とし、降段後は止まらず2m以上歩行をしてもらった。計測前に、先に降ろしやすい下肢を決定してから5試行計測した。計測はウォークwayMW-1000(アニマ株式会社)を18 ㎝の台の上に1枚、床面に1枚の計2枚を設置し、サンプリング周波数を100 ㎐として計測した。算出項目は ①両側NDT、②下段下肢の衝撃吸収能、③下段下肢の最大圧力(以下、MaxP)と接地から最大圧力までにかかった時間(以下、MaxT)、④下段下肢接地直前の上段下肢の足圧中心位置(COP)とした。②はLoading rateを参考に算出した。なお、衝撃吸収能は値が小さくなるほど衝撃吸収が良いとされている。衝撃吸収能とMaxPは体重にて正規化した。④は足圧の内縁と後縁の交点を原点とし、COPの座標をCOPxとCOPyとして算出した。COPxは足圧の左右幅、COPyは足圧の前後幅で除して正規化した。</p><p> 統計は統計ソフトSPSSにてShapiro-Wilkの正規性の検定を実施し、正規性の確認をした後、Pearsonの積率相関係数を算出した。有意水準は5%とした。</p><p> 本研究はヘルシンキ宣言に従い実施した。また被験者には説明を十分におこない同意を得られてから計測をおこなった。</p><p>【結果】 上段下肢NDTは衝撃吸収能(r=-0.86)、MaxT(r=0.79)、COPx(r=-0.79)、COPy(r=0.84)で有意な相関があった。衝撃吸収能は上段下肢NDT以外でMaxT(r=-0.93)、COPx(r=0.86)、COPy(r=-0.80)と有意な相関があった。MaxTは上段下肢NDTと衝撃吸収能以外でCOPx(r=-0.85)、COPy(r=0.69)と有意な相関があった。COPxは上段下肢NDTと衝撃吸収能、MaxT以外でCOPy(r=-0.85)と有意な相関があった。なお、上段下肢NDTの基準値を0.6 ㎝から0.9 ㎝とした場合、0.6 ㎝未満が3名、0.9 ㎝を超えた者は1名であった。</p><p>【考察】 上段下肢NDTが小さくなるほど下段下肢の衝撃吸収能が悪く、COPは外後方へ偏位していることがわかった。また、衝撃吸収能とMaxPには相関がなく、MaxTと相関があったことから、降段動作の衝撃吸収能には下段下肢のMaxTが影響していることがわかった。降段動作では下段下肢への体重の受け渡しが生じるため、重心は前下方へ移動すると同時に下段下肢方向へ移動する必要がある。牧川らによると第1中足趾節関節は内側、第2~第5中足趾節関節は外側のように関節の向いている方向が異なり、進む方向に合わせて中足趾節関節を使い分けているとされる。上段下肢からみて下段下肢は内側にあるため、第1中足趾節関節で回転をする方が理にかなっている。上段下肢NDTが小さいほどCOPは外後方へ偏位していることから、第1中足趾節関節での回転がおこないにくく、降段時のバランス制御が難しくなり、MaxTが小さくなったのではないかと考えた。</p><p>【まとめ】 上段下肢のNDTが小さくなるほどCOPは外後方に偏位し、下段下肢の最大圧力までにかかる時間が小さくなった結果、衝撃吸収能が悪くなることがわかった。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390017289897121152
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2023.0_143
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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