慢性期頚髄損傷患者へ脂肪組織由来再生幹細胞 (ADRCs)注入術とリハビリテーションを行った症例の経験

DOI
  • 古川 繁
    社会医療法人令和会 熊本リハビリテーション病院

書誌事項

タイトル別名
  • O-147 骨関節・脊髄⑥

抄録

<p>【目的】 当院では2019年7月より脂肪組織由来再生幹細胞注入術を慢性期脊髄損傷患者対象に実施している。治療終了後リハビリテーションを、約1か月を目安として実施している。当院における再生医療治療後のリハビリテーションは、目的として主に機能面評価、ADL能力向上、自主運動指導、自己管理能力向上が挙げられる。今回、慢性期頚髄損傷患者に対し脂肪組織由来再生幹細胞点滴静注治療後に約1か月程度リハビリテーションを行い、退院後の術後12か月まで定期評価を行った結果、継続的な改善を認めたので報告する。</p><p>【症例紹介】 症例は頚髄損傷の診断を受けた63歳男性。術前の損傷レベルはC5、AIS:D。社会資源は通所リハを利用されており、主にストレッチや筋力トレーニングを実施していた。demandはもっと歩けるようになりたい。術前ADLは、起居動作は柵を使用して、肩甲帯を支え介助で行う一部介助レベル。移動は場面に応じて車いすと歩行を併用、自宅内はプラスチック短下肢装具を両下肢に着用して歩行器で移動、屋外は車いすを自己駆動にて移動されていた。階段は手すりを使用して腰部介助レベル。車の運転や仕事で使用していた重機は、受傷後は実施していない。</p><p> 今回、手術を受けられた時期は発症より1.5年後、治療やリハビリのために術後1か月程度入院されていた。その際はROM運動、歩行運動、起立運動、自主運動指導を中心にリハビリテーションを行っており、自主運動に関しては、入院中より帰宅後を想定した自主運動をリハビリ時間外でも実施していた。</p><p>【調査方法】 調査期間は手術2週間前から12か月後まで。</p><p> 定期評価のタイミングは全部で6回。それぞれ手術2週間前(以下、術前)、手術後1週間(以下、術後)、術後1か月、術後3か月、術後6か月、術後12か月とした。</p><p> 評価項目はAIS(ASIA impairment scale)、MAS(Modified Ashworth Scale)、m-FIM、握力とした。</p><p>【結果】 AISは12ヶ月後までD、著変なかった。術前から術後にかけてASIA運動(上肢)は向上、ASIA知覚は低下、m-FIMは不変であった。術後から1か月後の機能面は不変、m-FIMは向上を認めた。1か月から12か月までASIA運動(下肢)・ASIA知覚、m-FIM全て向上した。神経学的レベルは運動、知覚ともに、術後より改善を認めその状態は12か月後まで継続していた。</p><p> ADLに関する経過は、</p><p>術後:ADLは術前と比較して著変なし。</p><p>1ヶ月後:歩行は装具未着用にて160m程度T字杖監視歩行可能。起居自立、階段昇降監視レベル、室内は歩行、屋外は車いす移動レベルで自宅退院。ストレッチを中心に入院中より行っていた自主運動を習慣化するよう指導。</p><p>3ヶ月後:家屋内移動は伝い歩きで可能。</p><p>重機の操縦や車の運転が可能、段差昇降自立、自主運動は継続、通所リハの利用状況は入院前と著変なし。</p><p>6ヶ月後:3ヶ月後と著明な変化なく生活されていた。</p><p>自主運動と通所リハにて運動は行っていた。</p><p>12ヶ月後:熊本豪雨の影響により、通所リハの活用が一時中止となり活動性低下。自主運動は継続。</p><p> なお、退院後~12ヶ月後の評価まで長距離移動は車椅子を使用していた。</p><p>【結論】 脂肪組織由来再生幹細胞注入術後、上下肢の筋力増強、筋緊張低下といった運動機能改善を認めた。運動機能改善に加え、術後リハビリテーションを行うことでADL能力向上を認めた。運動機能改善とADL能力向上による相乗効果で、退院後の活動性向上に継続することが出来た。術後より自主運動指導を含めたリハビリテーションを行うことが、活動レベルの維持・向上の一助となり得ると思われた。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390017289897122432
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2023.0_147
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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