股関節外傷術後患者におけるHarmonic Ratio 評価の有用性について
書誌事項
- タイトル別名
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- O-169 測定・評価③
抄録
<p>【目的】 リハビリテーションを実施する上で、ADLの向上に歩行能力の向上は重要である。近年、臨床において簡便な歩行時の質的評価として加速度情報から規則性・調和性・対称性を定量化するHarmonic Ratio(以下、HR)の研究が増えきている。HRに関して、高齢者や脳卒中患者の評価について報告はあるが、股関節外傷後患者についての報告は我々が渉猟した限り存在しない。そこで、本研究の目的は高齢健常者と股関節外傷術後患者を対象に歩行動作におけるHRが股関節外傷後の滑らかさと一側性障害後の評価に有用であるかを検討することとした。</p><p>【方法】 対象者は60歳以上の高齢健常女性20名(健常群)及び、過去に認知症の既往がなくMMSE24点以上の股関節外傷術後の女性20名(股関節外傷群)とした。方法は9軸ワイヤレスモーションセンサ(スポーツセンシング社製)を用い、被検者の第3腰椎棘突起部に位置するように伸張性バンドで固定した。歩行は前後に3mの補助路を設け、定常歩行10mを計測した。課題動作は快適速度歩行と最大速度歩行とした。股関節外傷群の計測は術後7週間を目安とし、歩行動作が自立レベルで退院準備期に実施した。HRは1歩を1周期として1歩行周期を離散フーリエ変換(Discrete Fourier Transform:DFT)し、20周期までを解析対象とした。左右方向は奇数/偶数、その他は偶数/奇数として算出した。加えて、1歩行周期(ストライド)を1周期として2歩行周期をDFT、40周期からストライドHR(sHR)を算出した。sHRは全方向偶数/奇数として算出した。</p><p> データの正規性はShapiro-Wilk検定、等分散性はLevene検定を用いて確認した。股関節外傷群と健常群におけるHRとsHRの比較には2標本t検定、Mann-WhitneyのU検定を用いた。HRとsHRの比較には対応のあるt検定、Wilcoxonの符号付き順位検定を用いた。有意水準は5%とした。すべての統計解析はWindows版のR4.2.1(CRAN, freeware)を用いた。</p><p>【結果】 HRの比較において、快適歩行速度と最大歩行速度の両方の全方向で健常群が有意に高値であった(<0.001)。</p><p> sHRの比較において、快適歩行速度では全方向で健常群が有意に高値であった(<0.001)。最大歩行速度では三軸合成を除いて健常群が有意に高値であった(左右<0.001、鉛直・前後<0.05)。</p><p> HRとsHRの比較において、健常群における快適歩行速度では左右方向でHRが有意に低値であった(<0.05)。股関節外傷群において、快適歩行速度では全方向でHRが有意に低値であった(左右<0.05、前後<0.001、その他<0.01)。最大歩行速度では全方向でHRが有意に低値だった(左右<0.01、前後<0.05、その他<0.001)。</p><p>【考察】 HRに関して、快適速度歩行と最大歩行速度の両方において、全方向で健常群が有意に高値であったことから移動が自立し、退院準備期においても股関節外傷群は滑らかさが低下している可能性が示唆された。</p><p> sHRに関して、最大歩行速度の三軸合成においては有意な差を認めなかった。そのため、一側性障害後の評価にはHRに加えてsHRを評価することは有用である可能性が示唆された。</p><p> HRとsHRの比較に関して、Kavanaghらは高齢者の内外側方向において滑らかさが小さいことを報告しており、高齢健常女性も対称性と滑らかさが低下している可能性が考えられる。さらには、快適歩行速度の左右方向除いて有意差を認めなかったことから、40周期までから算出したsHRの評価有用性が示唆された。</p><p>【倫理的配慮、説明と同意】 本研究はくまもと県北病院倫理委員会の承認(2020-012)を受け実施した。すべての対象者にヘルシンキ宣言に基づき倫理的配慮を行い、書面を用いて研究の内容および意義を説明し、同意を得た。</p>
収録刊行物
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- 九州理学療法士学術大会誌
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九州理学療法士学術大会誌 2023 (0), 169-, 2023
公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390017289897130880
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- ISSN
- 24343889
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可