院内で生じた転倒と認知関連行動アセスメントの関連性

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  • O-076 測定・評価②

抄録

<p>【はじめに】 転倒とは人が同一平面あるいはより低い平面へ倒れることと定義されており、高齢者の入院が大多数を占める当院では高度の認知機能低下、精神状態の変容によって十分にこれらの精査が行えず転倒に繋がるケースを経験する。そこで今回、森田らによって開発された認知行動アセスメント(Cognitive-Behavioral Assessment:以下、CBA)を使用し転倒との関連性を検証した。CBAとは各種行動内容から全般症状の評価が可能とされ、意識・感情・注意・記憶・判断・病識の6領域を5段階で重症度の判定を行う。よってCBAと転倒の関連性を検証することで、当院入院患者の行動から転倒リスクの把握に繋がると考えた。</p><p>【対象と方法】</p><p>1. 2022年12月1日~31日の当院一般病棟入院患者から後方視的に転倒の有無をカルテ記録から抽出し、転倒、非転倒患者に関わらずCBAを実施した。その際、評価時間は多くの患者が覚醒している12-13時の同一時間に行った。また評価は日常生活場面の観察により行い、十分な情報を得られない際には多職種からの情報を収集し評価を行った。CBA評価は領域別の評価者信頼性は良好であるとされ、今回の評価は中枢疾患に十年以上携わる理学療法士により行った。</p><p>2. 得られたデータを転倒・非転倒群に分け、年齢、男女比、長谷川式認知症スケール(以下、HDSR)、Functional Independence Measure(以下、FIM)CBA、の各項目(意識・感情・注意・記憶・判断・病識)と総合得点を比較する。その際、FIMの移乗・移動項目がすべて1点の患者は除外する。</p><p>3. 検定は対応のないt-検定で行い、使用する統計ソフトはMicrosoft Excel2016を使用した。</p><p>【結果】 評価を行った入院患者は23名(男性8名、女性15名)より、移乗・移動項目がすべて1点だった患者を除外し、対象者は13名(男性6名、女性7名)。整形外科疾患が11名、脳血管疾患が2名。非転倒群8名、転倒群5名の両群で検定を実施。年齢、男女比、HDSR、FIMには有意差を認めなかった。(P>0.05)CBAの意識・感情・注意・記憶・判断の項目、合計点数には有意差を認めなかった。(P>0.05)しかし、CBA項目の病識は転倒群で有意に低下していた。(P<0.05)</p><p>【考察とまとめ】 今回、CBAと転倒の関連性を検証し、転倒群において病識の項目のみが優位に低下していた。井山らは病識とは幅広い意味を持つが、心理臨床に置いては病識を気づきととらえ、問題対処能力を含んだ幅広いとらえかたが一般的であると述べている。病識が低下した患者は危険に対する問題処理が行えずに転倒に繋がったと考える。また病棟では普段病識の低下は評価者により主観的に評価される。そのために転倒対策の必要性は個人の判断にばらつきが生じ連携が困難となる場合もある。しかし客観的に評価が可能なCBAと転倒の関連性が示唆された。今回得られた結果をもとに、CBAを用いて行動から病識の低下を客観的にとらえ、チームで転倒事故の低減につなげていきたい。日々の行動から気づきの変化に着目し、情報を多職種と共有することで日常生活場面での転倒対策を行っていきたい。</p><p> 最後に本研究の限界として、小標本の検証のため、標本数次第では結果が変動する可能性がある。また整形外科疾患を中心とした一般病床を対象としたために、求められる機能が異なる病棟においては結果が変動する可能性も考えられた。今後も継続的に調査を行い、役割の異なる病棟でも検証していきたい。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390017289897158272
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2023.0_76
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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