重度COPD を併存していたが職場復帰できた高齢心不全患者の1症例

DOI
  • 野中 正大
    独立行政法人地域医療機能推進機構 久留米総合病院 リハビリテーション部
  • 佐藤 憲明
    独立行政法人地域医療機能推進機構 久留米総合病院 リハビリテーション部
  • 平井 祐治
    独立行政法人地域医療機能推進機構 久留米総合病院 循環器内科
  • 豊増 謙太
    久留米大学医療センター 循環器内科

書誌事項

タイトル別名
  • O-060 呼吸・循環・代謝①

抄録

<p>【はじめに】 慢性心不全患者における慢性閉塞性肺疾患(以下、COPD)併存率は20~32%と報告されておりCOPD患者では心不全による入院リスクも高いと言われている。今回、重症高齢心不全とCOPD(GOLD分類Ⅳ期)を併存したが配置転換して職場復帰に至った症例を報告する。</p><p>【症例紹介】 60代後半の男性。身長165 ㎝、入院時体重58 ㎏、BMI:21.3。職業:介護士。自宅:マンション1人暮らし。45歳の時にCOPD診断(肺機能検査:FEV1:0.71L(27.6%)、%VC:1.69L(50.0%)、FEV1%:42.01%)されHOT導入検討中であった。X年1月呼吸困難感の増悪のため当院救急搬送。搬送時心拍数120以上で心電図で心房細動波形。血液ガス検査(酸素2L)でPH:7.30、PaO2:95 ㎜Hg、PaCO2:65.4 ㎜Hg、HCO3:31.9mEq/L。心エコーでLVEF23.8%、左心室モヤモヤエコー。レントゲンでCTR58%と心拡大、胸水貯留。血液検査でNTPro-BNP10986と心不全を認めた。酸素カニューレ2L+抗菌薬の内服、フロセミドによる持続静注による治療開始し8病日目にリハビリ開始。</p><p>【理学療法評価】 酸素カニューレ2LでSpO2安静時96~97%、呼吸数20回、安静時HR60~70台。視診触診:下腿浮腫+、起坐呼吸+。Short Physical Performance Battery(以下、SPPB)6点(歩行1点+バランス4点+起立1点)。30second chair stand test(以下、CS-30)8回。握力(R/L)27.6/27.0 ㎏。10m歩行35秒42。6分間歩行試験(以下、6MWT)103m、Borg指数13、SpO295~97%、呼吸数24回 最大HR92。</p><p> Cahalinらが報告した6MWTによる予測Peak VO2の式を用いた。</p><p> 予測Peak VO2=0.006×6MWT÷0.305+3.38=5.4 ㎖/㎏/min。推定METs=5.4÷3.5=1.54METs。</p><p> BarthelIndex(以下、BI)70点。フレイル評価(改訂日本版CHS基準)では5項目全てに該当しフレイルの状態であった。</p><p>【運動負荷量の設定】 運動負荷量は日本循環器学会のガイドラインと主治医の指示に基づきBorg指数による自覚的運動強度13以下と安静時心拍数(以下、HR)を基準とした簡便法を使用し安静時HR+20、また最高HR100以下としてレジスタンストレーニングや歩行練習、エルゴメーター等を実施。運動耐容能の改善に合わせて運動負荷量は変更した。</p><p>【理学療法最終評価】 酸素カニューレ2LでSpO2安静時96~99%、呼吸数18回、安静時HR60~70台。視診触診:下腿浮腫-、起坐呼吸-。SPPB12点。CS-30:14回。握力28.8/27.9 ㎏。10m歩行8秒92。6MWT390m、Borg指数13、SpO295~97%、呼吸数24回 最大HR86。</p><p> 予測Peak VO2=11.0 ㎖/㎏/min。推定METs=3.15METs。BI 1,100点。安静時1L、労作時2LでHOT導入となり29病日目に自宅退院。</p><p> 復職に関しては、国立健康・栄養研究所が作成した身体活動の運動METs表では介護活動の運動METsは4METs(入浴動作、移乗動作)としている。退院前の運動耐容能では過負荷になる可能性があり、またHOT導入する点や本人と職場担当者が共に配置転換を希望した事から、職場は事務員として復帰する事となった。</p><p>【考察】 予測Peak VO2の式を使用して適切に運動耐容能を評価した。結果、運動耐容能は改善したが介護活動は4METsは必要であり過負荷になるリスクがある事が分かった。しかし、事務員(オフィスワーク1.5METs)であれば復帰可能と考えられ、主治医や職場担当者とカンファレンスを行い、現状を報告した。その結果、本人・職場双方の希望として、事務員としての復職する方針となった。運動療法を行ったことで身体的フレイルが改善、環境調整を行った事で配置転換して職場復帰が可能となり、社会的フレイルの予防に繋げられたと思われる。</p><p>【倫理的配慮、説明と同意】 本報告はヘルシンキ宣言に従って倫理的配慮を行うと共に、対象者本人に口頭で説明を行い同意を得た。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390017289897166336
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2023.0_60
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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